発がん疑い「PFAS」汚染水 米軍基地周辺だけではない!全国で検出相次ぐ
画像を見る 水道水を介して、人体に入る恐れが(写真:kaka/PIXTA)

 

■基地周辺だけではない全国にあった“汚染水”

 

「正直、基地周辺だけの話と思っていました。まさか自分が住んでいる地域が汚染されていたなんて」

 

11月に設立された「大阪PFAS汚染と健康を考える会」事務局長の長瀬文雄さんはそう危惧する。大阪府摂津市の地下水からは、暫定基準値の520倍にあたる2万6千ng/LのPFASが検出されている。

 

「摂津市は、ダイキン工業の工場(淀川製作所)があって、すでに製造は中止しているものの過去何十年もフッ素加工に使用する“PFOA”(PFASの一種)を製造していました。製造過程で生じる廃水が地下水や河川、土壌を汚染したと考えられています」(長瀬さん)

 

当会では摂津市をはじめ大阪府民、約千人の血液検査を実施中だ。

 

「先行して実施した摂津市民約80人の血液検査では、3分の1以上の住民から米国アカデミーの指標で“要健康観察”となる20 ng/mLを超えるPFASが検出されています」(長瀬さん)

 

住民らと共に検査を行っている京都大学(環境衛生学)准教授の原田浩二さんはこう指摘する。

 

「摂津市の場合は、とくにダイキン工業周辺の自家農園で野菜を作って食べている方の血液から高い濃度が検出されています。汚染された地下水を使用していなくても、周辺土壌に汚染が蓄積し、そこで作った農産物を通して体内に取り込まれる可能性があるのです」

 

PFASの汚染が見つかったのは摂津市だけではない。今年10月には岡山県吉備中央町の浄水場から国の暫定目標値を超えたPFASが検出されたことで、飲み水の利用制限が行われた。また、神奈川県や兵庫県、静岡県などでも、河川や地下水などで暫定目標値を超えるPFASが検出されている。

 

「長年にわたって摂取した量が多いと、一定の疾患に罹患しやすくなる可能性が。PFASを扱っていた米・デュポン社は2005年、周辺住民に健康被害で訴えられたのですが、和解したあとで実施した周辺住民の健康調査では、腎臓がんや精巣がん、コレステロール値の上昇、妊娠高血圧症、甲状腺疾患などの疾患が増加していることが示されました」(原田さん)

 

欧米では、10年ほど前から規制が進んでおり、アメリカの環境保護局は今年3月、PFASの種類で代表的な“PFOS”と“PFOA”それぞれの基準値を4ng/Lとする新たな規制値案を提示。しかし日本は、暫定目標値50ng/Lのままと出遅れている。

 

「政府は早急に汚染地域の特定と環境対策、住民の健康調査をすべき。水俣病のような公害に発展しかねません」(前出・長瀬さん)

 

前出の原田さんは「自宅の蛇口に活性炭フィルターを付けるだけでPFASの除去効果が期待できる」と言う。自衛の検討も必要かもしれない。

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