■急激なインフレは増税されたのと同じ
とはいえアベノミクスでは、株価が上昇し、雇用も改善したともいわれるが……。
「株価上昇は、円安になって外国人投資家にとって日本株がお買い得になったこと、さらには日銀と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の公的マネーが株式市場に大量に流れたからです。
雇用も、2019年と2012年の産業別雇用者数を比較すると、もっとも雇用者数を増やしたのは医療・福祉。高齢者人口が増えたからで、アベノミクスとは無関係です。雇用の改善をもたらしたのは円安の影響を受けた宿泊業や製造業などごく一部に限られています」
円安、物価高、賃金が上がらない、という現状から早く抜け出すべきだが……。
「日本は、国債と借入金現在高が1200兆円以上という借金大国です。しかも現状では、国は、借金を借金で返している詐欺のような資金繰りをしています。この巨額の借金を処理できないことが激しい円安を招いている一因。国の借金が膨らみすぎれば、どこかで市場の信用が失われ、国債と円が暴落し、モノの値段が高騰する、ハイパーインフレが懸念されます」
インフレは“インフレ税”という別名を持っているという。
「たとえば物価が100倍になった場合、100万円は1万円の価値に。これは99万円を没収されたのと同じです。逆に国の借金も実質的価値が減少。没収された99万円が国の借金返済に充てられるのと同じだからインフレ税と呼ばれるのです。インフレを放置することは、気づかないうちに増税されているのに等しいのです」
そんななか日銀は、6月13~14日に行われた金融政策決定会合で、国債買い入れの減額を決めた。アベノミクスから続けてきた“国債の爆買い”をやめる方向にかじを切ったわけだ。
「国債の価格と金利は逆に動くので、日銀が国債の購入を減らすことで金利を上げることができます。日米の金利差が縮み、円安に一定の歯止めがかかるかもしれません。しかし、国債という国の借金の処理ができなければ、いずれ円は信用を失って、異常な円安が起こり、ハイパーインフレになる可能性は高いのです」
株高を享受したのは一部の資産家だけ。多くの庶民にとって、アベノミクスは、生活を貧しくしただけで終わりそうだ。