「がんを告白してからの5カ月間、本当にたくさんの方から励ましのメッセージをいただき、同じ病気の方から質問や悩みを寄せられることが多くなりました。本当はおひとりおひとりに返事をしたいのですが、行き届かないこともあり、今回、闘病記という形で詳しく経緯を記させていただきました」
昨年、『女性自身』11月24日号で4年8カ月に及ぶがん闘病と乳房再建を初告白した生稲晃子(48)。周囲に明かすことなく闘い続け、昨年秋に乳房再建手術を受けるまで、合計5度の手術を乗り越えてきた経緯をつづった初の著書『右胸にありがとう そして さようなら 5度の手術と乳房再建1800日』を先日出版した。
‘11年に早期で見つかった“ラッキーながん患者”から一転、2度の再発を経て、「命の保証はできない」と告げられてから、右胸を全摘するまでの苦悩と葛藤と決断。この経緯をつづることは、つらい記憶と当時の痛みを焼き直す作業でもあったが、自分の経験がわずかでも同じ病気で悩む女性の参考になればとの思いを込めた。同書には、闘病中の心の叫び、家族の支え、そして乳がん治療の最前線も記されている。
「心配してくださった方々に、テレビや雑誌ではお伝えしきれなかったことを、お答えするような気持ちでつづりました。放射線を照射して乳房内再発する症例はわずか1.7%とまれなケースだそうです。私はレアが続いてしまったんです。自分も検査に行ってみようとか、それだけがんは手強いということを考えるきっかけにしていただけたら。そうしたら私の体験も何か意味があるのかなと思えます」
乳房再建は’14年から保険適用の範囲が広がったこともあり、かつて乳がんで全摘手術を受けた人が、この機会に再建手術を希望するケースも多いという。乳房再建術を受けたくだりは、とりわけページを割いた。
「私の場合は、放射線照射をしているので皮膚の拘縮があり、寝返りさえ打てないほどの激痛に悩まされました。けれどこれは本当にレアなケース。“激痛”などと書いて、これから(乳房再建術を)受ける方が躊躇してしまっては申し訳ないのですが、正直にお伝えすることを大切にしました。ただ朗報としては、いま本当に乳房再建は“美容的な満足度”を追求してもいい時代になっているんですよ」
昨今は医師の提示する治療法に疑念を持ち、満足のいく医療を求めてドクターショッピングをするケースも多い。まさに患者が治療を選び取る時代とも言われている。
「いまは日々、新しい胸が自分の体になじんできています。ですから全摘と宣告されても絶望しないでほしいのです。再建技術が格段に上がっているということをぜひ知っていただきたいと思います」
今後は啓蒙活動にも力を入れたいという生稲。女性として母として、彼女のこれからに注目していきたい。
右胸にありがとう そして さようなら 5度の手術と乳房再建1800日
2016年4月26日発売 定価(本体1,300円+税)