■人里におりているのは、2023年生まれクマの“子グマ”
「今年クマの出没が多いことは、じつは2023年の夏に予測済みでした。
クマの人里への出没は、クマが越冬に備えて採餌する広葉樹の果実が凶作の年に多いんです。2022年は餌資源が豊作となったことで、出産が進み母子グマが増加。その状況でさらに秋に凶作となった2023年は、クマが大出没となった年でした。今年の前半、捕獲や目撃されたクマは、体長1mほどの個体が多い。つまり、大量に出没した2023年に生まれた2歳半のクマであると考えられています」(米田氏、以下同)
さらに、これらのクマが“アーバンベア”であることも、遭遇・目撃の要因だという。
「2023年の晩秋には人の生活圏内で多くの母グマが捕殺されましたが、残された子グマは習性として、山に帰らずに母親を見失った場所の周辺に生息し続ける傾向にあります。その結果、一部は人里近くで越冬し、人や車の生活音なども恐れない『アーバンベア』(都市型クマ)になっていると考えられます。今年よく聞く『家に入り込み人を襲う』『玄関を出た直後に襲う』といった被害は、人の生活圏にアーバンベアが定着している証拠といえます」
山だけでなく、市街地でクマが出没することも珍しくなくなった。10月からはより危険な状況になると米田氏は語る。
「クマは、9月から11月は飽食期といわれ、冬眠前の食いだめのために、食べることに専念します。これからは、従来どおり山で生活していたクマに加え、アーバンベアもいる。それらのクマがいっせいに里に下りてくることが考えられます。山から下りてきたクマは、多少は人を恐れるかもしれませんが、アーバンベアは、人を怖がりません。食べることに夢中で、何をしでかすかわからないのです」
冒頭のクマが捕獲された場所の近くにも、記者の実家で管理している柿と栗の木があった。「もしかしたら、お腹を空かせてこれを食べに来ていたのかも」と猟友会も語る。
埼玉県は7日、ドングリなどの堅果類豊凶調査の結果について、コナラが凶作、ブナが大凶作であったと公表した。東北地方や新潟県でも同様の結果が出ている。
冬眠前の主要な栄養源であるドングリの不作により、食べ物を求めて町におりてきたクマとの遭遇が増える可能性が、とくに高まっている今年。「自分の地域は大丈夫」と慢心せず、よりいっそうの警戒が必要だ。
画像ページ >【写真あり】農作業用の小屋の脇の罠にかかったクマ(他3枚)
