「ジャングリア沖縄」の巨額赤字や来場者数をめぐる問題が取り沙汰されるなか、沖縄でまた新たな問題が浮上している。石垣島と台湾を結ぶ国際旅客フェリー「やいま丸」が10月1日から運休した。就航からわずか4カ月での運航ストップだ――。
日本最南端の国際航路としてスタートした「やいま丸」は、493人分の就寝スペースを備え、石垣島と台湾の間を週2便で結んでいた。突然の運航ストップに地元・石垣市民の間でショックと憤りが広がっているが、問題の本質は単なる業績不振による運休にとどまらない。メディアや地元議会による追及のなかで浮き彫りになったのは、事業の収支を見られないなかで、市民の税金が際限なく投入されようとする異様な事業スキームだった。
「やいま丸を巡ってはいびつな運営構造が強く批判されています。市が補助金を出資している日本の会社(商船やいま)は船舶代理店業のみを行う一方で、船の所有権はパナマ法人が持ち、運賃収入は台湾の大手企業ワゴングループに入るのです。しかも、外国法人であることを理由に、事業の決算を市議会に提出する義務がないとされ、市は船の収支詳細を把握できない状況下で、さらなる赤字補填が税金で行われようとしているのです」(地元紙記者)
議会でこの問題を追及してきた大道夏代石垣市議は、本誌の取材にこう語る。
「事の発端は数年前に石垣市が船を30億円で購入して、台湾までの就航事業を始めると言い出したことです。私は事業決定前に乗船してみましたが、バリアフリーにも対応してない、築30年ほどの中古船でした。私は当初から『30億円も出してやる事業ではない』とずっと反対していたのですが、議会では与党(市長派)が多数派のため、話はどんどん進められてしまいました」
船は石垣市が直接購入するのではなく、新たに設立された会社「商船やいま」が買い付ける方式が取られた。ところが、その「商船やいま」の設立にも疑問が残るという。
「社長は中山義隆市長の後援会会長だった方がたった1人で5万円を出資して設立した会社です。実績のない会社が船のビジネスをするのはおかしいですし、市にお金がないなか、膨大な費用が同社に注ぎ込まれるようになりました。
これを民間企業が自分のお金でやるのであれば自由なんですよ。でも、多額の市の税金が使われ、赤字になった際の損失補償までついています。それなのに決算や赤字の詳しい状況を市は説明しません。事態を知った市民からも『おかしい』『やめるべきだ』『なぜ税金が使われなければいけないのか』と大多数の反対の声が上がっています」
運航が始まってみれば、平均乗船率は3割にとどまり、貨物輸送はまだ一件も行われていないという。
「定員545人・コンテナ180個分のスペースという、石垣市には持て余すほどの大型船を運航させても、満員になるわけがありません。それでも当初、市側は『観光や経済の活性化につながる』『石垣牛などの特産品を台湾に輸出できる』と強調し、『初年度で5000万円の黒字を見込んでいる』と試算していました。それが、実際は運ぶものもないという惨憺たる有り様です」
この問題の一番の責任者は誰かという問いに、大道市議はこう語る。
「中山市長に全責任があると思っています。市長は現在5期目ですが、独断で進めているように見えます。
最初は『市が事業をやる』とは言わず、『法人がやる、市は補助を出すだけ』という形で『商船やいま』を設立した。それが後から市が1000万円を出資して第三セクター化され、さらに先月には副市長を副社長として送り込むなど、実質的に市の事業のようになっています。
市長は頻繁に台湾へ出張していますが、台湾側にばかりお金が流れて、石垣市には何の利益もない事業だと感じています。この事業の赤字のために、学校関係など、市民に必要な予算が削られました。市職員もストップをかけられず、嫌々進めている状況なのではないでしょうか」
10月1日の運休後も台湾での係留費、船員費、燃料代などの維持費は発生し続け、赤字は膨らむ一方。さらに、船の所有権がパナマ法人にあるため、船代30億円の支払いが滞れば、船を失う恐れもあるという。その損失を補償するために投入されるのは血税だ。事業にはふるさと納税も使われており、石垣市民だけの問題ではない。
華々しい目的を掲げて始まった事業は、いまやその事業構造と収支の透明性が厳しく問われる事態となっている。
画像ページ >【写真あり】“30億円フェリー”をめぐる説明責任が問われる中山市長(他1枚)
