■橋下氏「権限、力、お金をむしり取る」
では、なぜ2度の住民投票で否決されても、3度目の都構想を進めるのか。薬師院さんが振り返るのが、2011年6月29日、当時大阪府知事だった橋下徹氏(57)の発言だ。
「橋下氏は『大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る』と発言しています。私は、ここに本音が出ていると思うんです。大阪市は大きな権限と財源を持っている。それを府に持っていき、IR(カジノを含む統合型リゾート)などの大規模開発に使いやすくする。そういうことではないのか、と私は見ています」
一方で維新側は、都構想の目的として“二重行政”の制度的な解消などを掲げてきた。
「最初の住民投票では『二重行政をなくす』ということが盛んに言われました。しかし、『二重行政で困っている。毎日困っているから、なんとかしてくれ』と言っていた市民がどれだけいたのか。そんな人、ほとんどいないでしょう」
結局、一度目の住民投票では否決――。
「その後、今度は“副首都”という言葉を前面に出してきた。でも、何度も言いますが、副首都と都構想は別のものなんです」(薬師院さん)
横山市長自身も6月4日の定例会見で、「副首都と都構想は別のプロジェクト」と認めている。そのうえで、「副首都をめざすのであれば大阪都構想をめざす」と説明している。
■今度は「廃止」を「再編」に?
そして、いま争点になっているのが「大阪市廃止」という言葉だ。
2015年の1回目の住民投票では、投票用紙に「大阪市廃止」とは書かれていなかった。
そこで薬師院さんらは2018年、「大阪市が廃止される事実を投票用紙に記載してほしい」と陳情。維新以外の賛成多数で採択され、2020年の2回目の住民投票では「大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票」と明記された。
ところが今回は逆の動きが起きている。
「9月25日、大阪市議会財政総務委員会は、『大阪市を廃止する』という表現を避け、『再編』などと表記するよう求める市民グループの陳情を、維新市議らの賛成多数で採択しました。
ところがその後、陳情者34人のなかに日本維新の会所属国会議員の秘書ら複数の維新関係者が含まれていたことが判明。さらに別に、維新府議の秘書がほぼ同趣旨の陳情を提出し、審議前に取り下げていたことも明らかになっています」(在阪記者)
維新側は議員や党からの指示を否定しているが、「自作自演」との批判も高まっている。10月2日、維新の会の吉村洋文代表(51)は「外形的には議員からの指示があったと思われても仕方ない。慎重にすべきだった」と述べつつも、採択された陳情は尊重されるべきだと語っている。
一方、「大阪市を廃止し、特別区を設置する」と投票用紙に明記するよう求める陳情は不採択となった。3度目の住民投票では、「大阪市廃止」の文字が再び消えるのか。
「書かれない可能性はあるでしょうね」と薬師院さん。ただし、最終的に投票用紙の文言を決めるのは大阪市選挙管理委員会だ。薬師院さんはこう訴える。
「副首都になるための住民投票だと思っている人は少なくありません。でも、そういう住民投票ではなく、大阪市を廃止するかどうかを決める投票なんです。まず、そのことを正しく伝えないといけない」
「ミャクミャ区」か、「ハルカス区」か――。区の名前を考える前に、市民に知らせなければならないことがあるのではないだろうか。
画像ページ >【写真あり】維新が与党入りしたこともあり、副首都法がスピード成立(他1枚)
