■大手企業は「被害者」、下請け業者は「民民」なのか
来田さんは、万博の大屋根リング工事をめぐる水増し請求事件で、元所長の男性が背任の罪に問われた事件に関し、吉村知事の対応にも疑問を投げかけた。
「私たち被害者に対しては『民民の問題だ』と言って切り捨てる。ところが竹中工務店に関しては、事件を起こした元所長が悪いのであって、竹中工務店は『被害者だ』とおっしゃっている」
来田さんが疑問視するのは、相手が中小の下請け業者か、大手企業かによって、あまりにも吉村知事の対応が違いすぎるのではないか、という点だ。
「吉村知事は、本来、法律に基づいて公平に対応すべき立場の方ですよね。不正を見抜けなかった会社の管理体制についても、建設業法に基づく監督・指導の対象にならないのか、行政として検証すべきではないでしょうか。また、吉村知事も万博協会の副会長として、不正の実態を確認し、必要に応じて所管する行政機関に対応を求めるべきだと思います」
■「民民」の2文字で見捨てられた
会見では、未払いによって生活を大きく変えられた業者たちも、その苦境を語った。
前出のAさんは、大手ゼネコンが海外パビリオン建設から手を引くなか、中小企業に協力が求められたと振り返る。
「何とか万博を成功させたい。世界中から来られる方々に喜んでいただきたい。そういう思いで協力したんです」
工期は厳しく、昼夜を問わず働いて開幕に間に合わせたという。
「私たちは、むしろ称えられることはあっても、批判されるようなことは何一つしていないと思っています。ところが工事代金が支払われず、本当に多くのものを失いました。これまでどおりの生活も、仕事もできなくなったんです」
Aさんたちは、当初から国や大阪府に支援を求めてきた。
「未払いになっている工事代金を、すべて国や大阪府に肩代わりしてほしいと言っているわけではありません。今の苦しい状況を乗り越えるために、最低限の力を貸してほしい。それだけなんです」
しかし、返ってきたのは「民間同士の問題」という説明だった。
「結局は『民民』という、たった2文字の言葉で見捨てられてしまったんです」
■「息子には悪いことをした」父親が明かす苦悩
さらに深刻なのが、ルーマニア館とセルビア館の工事に携わったBさんのケースだ。
Bさんによると、工事を請け負ったフランスのイベント大手GLイベンツ・ジャパン(以下、GL社)の担当者から、現場で次々と追加の作業や資材の手配を求められたという。
「工事中はGL社の担当者が何度も現場に来て、資材の追加などを次々と指示するんです。言われたとおりに用意しても、余った資材は放置されたまま。建設機械も必要以上に長く現場に置かれ、その分の費用がかさんでいきました」
GL社から工事代金は支払われず、ルーマニア館だけで約2,000万円の未払いがあるという。
「私たちの下には何社もの協力業者がいます。『上からお金が入らないから払えない』では済まされません。苦しいなかでも協力業者への支払いを続けてきましたが、銀行からの融資も難しく、何度大阪府・市に訴えても冷たい対応しか返ってきませんでした」
Bさんは、蓄えのほとんどを支払いに充てたという。
「会社は息子が引き継いでいましたが、未払い問題によって仕事を続けることが難しくなって、現在は休眠状態です。息子は深夜の仕事をして生計を立てています。そういう生活が、もう1年近く続いているんです。息子には本当に悪いことをしたと思っています」
