「あの日から私たち家族の生活が180度変わりました。放射能との闘い、チェルノブイリとの闘いがテーマの人生になってしまったんです」そう語るのは、チェルノブイリ事故の元作業員(63)を夫に持つオリガさん(66)だ。
25年前の4月26日。半月の現場任務を終え帰宅した夫は、放射能汚染で別人のようになっていた。「夫は足が悪くなり、心臓も胃も内臓は全部病気を抱えていました」と語るオリガさん。あれから25年。夫婦の半生は、絶えず発症する夫の病気との闘いの日々だった。
現在、チェルノブイリ原発事故が起きた地域には『ゾーン』と呼ばれる居住禁止区域が設けられている。18歳未満は入ることのできないこの区域では、今も高い放射線量が記録され続け、多くの作業員が事後処理に当たっている。
また、事故後、子どもたちには甲状腺がんや多くの疾患が目立つようになった。「放射能による疾患は第2世代、第3世代の子どもたちへと受け継がれています」と語るのは、『ウクライナ被曝予防特別保養所』のヴァデム医師だ。
同センターは毎年2500人の子どもたちを受け入れているが、その数は今も減っていないという。放射能疾患が子どもに受け継がれてしまった母親のレーナさん(31)は「本当にショックでした。この子も同じ苦しむ人生を送るのかと……」と苦悩を隠さない。
この言葉を、我が国の母親たちは、そして法を守る立場の人はどう聞くだろうか――。