東京都世田谷区に住むAさん(41)は、「こんな汚染した車に子供を乗せていたのか!?」と、線量計の数値をみて愕然とした。昨年の震災後、東京と実家のある宮城県を東北自動車道で4回ほど往復している愛車から、通常よりも高い放射線量が計測されたのだ。
「何度も高速で福島県を通っているので洗車をまめにしましたが、気になって測ってみたら、タイヤ周辺が毎時0.8マイクロシーベルト。外気を取り込むエアフィルターが0.6マイクロシーベルト。運転席や後部座席が0.2マイクロシーベルト。それでも都内の空間線量より4倍以上の高い数値。これでは、ホットスポット・カーに乗っていたようなものです」
本誌が調べてたところ、東京都内だけを走っている一般車の平均的な放射線量の数値は、タイヤ周辺が0.2マイクロシーベルト、エアフィルターが0.25マイクロシーベルトだった。放射線環境地学を専門とする琉球大学の古川雅英教授はこう語る。
「Aさんの自動車から出た数値は、ただちに健康を害するレベルではありません。しかし車は、タイヤ、エアフィルター、そして車の底などに放射性物質が溜まっていきます。特にタイヤの溝に入り込んだものは、洗車したくらいでは、なかなか落ちませんからね」
それから数日後、記者のもとにAさんから電話がかかってきた。2人の子供を乗せてのドライブを趣味にしていたAさんが沈んだ声で語ったのは、「長年乗っていた車を手放すことにした」というものだった――。
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