「大豆、小麦、とうもろこしは世界の『食』のベース。アメリカの干ばつによる価格高騰が、日本人の食卓に及ぼす影響は想像以上です」
農政・食生活ジャーナリストの山本謙治さんが語る。現在アメリカでは、過去50年間で最悪といわれるほどの干ばつが発生している。その影響で、大豆やとうもろこしの価格が高騰中なのだ。
まず、大豆。日本人にとって味噌や醤油などの原料としてなじみの深い食品だが、その自給率はたったの7%(平成23年度)。多くをアメリカからの輸入に頼っているが、シカゴの商品取引所では過去最高値を更新し続けている。大豆は目に見えないところで形を変え、多くの食品に使われている。
『冷凍食品の餃子など、肉の代わりに『ソイミート』などの大豆食品で代替しているものがあります。大豆が高騰すればそれらも当然、値上がりすることに。また、大豆油は人気があります。代わりになる作物が増産できなければ、食用油の値上がりも避けられません」(山本さん)
実際にいくつかの食用油メーカーでは、10月からサラダ油などの出荷額値上げを決定、あるいはその検討に入ったと発表している。さらに、油を搾ったあとの大豆カス(脱脂大豆)は家畜の飼料として取引されているが、すでに高騰している状態だ。
「飼料代が1割上がれば、肉の原価は3割上がるといわれています。畜産業者が持ちこたえきれないとなれば、肉はグラム単価1割程度、値上がりするかもしれませんね」(山本さん)
とうもろこしはコーンスターチの原料。中華料理のとろみづけや、プリンの凝固剤、発泡酒の材料としても使われている。発泡酒にまで影響が?
そして、大豆・とうもろこしの不作から、小麦の価格まで高騰しているのだ。農林水産省は輸入小麦の価格について10月から、主要5銘柄のうちアメリカ産の2銘柄で8%引き上げると発表した。
「これを受けて、大手製粉メーカーが小麦粉の販売価格の値上げを検討しています。このままいけば、小麦製品全体に値上げが広がる恐れもあります」(山本さん)
パンにお菓子に麺類に……。家計への大打撃は必死だ。編集部では、大豆、小麦、とうもろこしがまたく手に入らなくなった食卓をシミュレーションしてみた。ごく普通の豚肉の生姜焼き定食で、食べられるのはご飯と野菜しかなくなってしまった!こんな食糧危機が現実問題となりつつある……。