1月に放送され16.8%という高視聴率を記録したNHKスペシャル『世界初撮影! 深海の超巨大イカ』。小笠原の深海で体長8メートルのダイオウイカとの23分間の奇跡の接近遭遇を記録したドキュメンタリーだ。それから半年。またもNHKの深海プロジェクトチームが快挙を成し遂げた。それが第二弾『謎の海底サメ王国』だ。

 今度の舞台は相模湾と駿河湾。とくに富士山の麓に広がる駿河湾は沿岸20キロで水深2千メートルを超える、世界でも珍しい深海湾だ。これらの海域ではこれまでに30近い新種が捕獲されており、世界一のサメの王国として知れわたっている。リーダーの岩崎弘倫プロデューサー(52)に話を聞いた。

「ダイオウイカは撮影までに10年。深海ザメも4年かかっています。イカチームとサメチームは同じ部屋に机を並べ、競い合う関係でしたが、どちらも撮影対象の難易度が高い。深海をどう攻めようかと、たがいにノウハウを共有して進めてきました」

ダイオウイカの撮影でも活躍した潜水艇や、小型深海カメラなどを駆使し体長6メートルのカグラザメ、オオウミヘビのような姿のラブカ、“悪魔のサメ”と呼ばれるミツクリザメなど、ユニークな深海ザメの姿が捉えられた。

なかでも番組の目玉として最後に登場するメガマウスザメは、ダイオウイカ以上に目撃例の少ない「幻の深海生物」だ。’76年に発見されるまで、誰もその存在を知らなかった。その巨大な口から「メガマウス」と命名されたが、ほかのサメのどれにも当てはまらない新種のサメと判明。口の内側が銀色で鏡のように反射するため、口の中に発光器官があり、その光で餌のプランクトンを引き寄せるとも考えられている。

「最後は本当にラッキーだったと思います。メガマウスがあんなに自由に泳いで、オキアミの群れに突っ込んでいくという、生態的なところまで撮れたのは世界初です」と岩崎氏もちょっぴり誇らしげに語る。ふたたび深海のロマンに釘づけになりそうだ。

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