「好きなのは、矢倉囲いの棒銀攻めです! 振り飛車も覚えたんですけど、ぼろ負けしてしまって……。最近では将棋仲間を増やすために、駒をかたどった将棋消しゴムや、将棋盤と駒のセットを友達にプレゼントしているんですよ」
「一人普及活動」にもいそしんでいるのは、現在公開中の映画『わたしのハワイの歩きかた』(東映)や、連続テレビ小説『花子とアン』(NHK)などで大活躍中の女優、高梨臨さん(25)。彼女が将棋にハマったのは、ほんの1年半ほど前。たまたま毎週日曜日にNHKで放送されている、対局番組をなんとなく見ていたのがきっかけ。
「駒の動かし方もわからないのに、対局する棋士の姿が興味深くて。勝負の世界なのに、終局したとき、勝者が難しい顔をしているんですね。“なんなんだろう、この世界は”って見ているうちに、興味が出てきたんです」
最近の女性将棋ファンに多いのが、彼女のような「観戦ファン」だ。イケメン棋士や、個性的な棋士など「推し棋士」を見つけて、ファンイベントなどに足を運ぶ人も多い。高梨さんも、羽生善治名人のファンに。
「対局のときに寝癖がついていたり、インタビューではちょっと天然っぽい発言があったり。対局中の真剣な表情とのギャップが好きになって、いまでは携帯電話の待ち受け画面に設定するほどの大ファンです」
対局を観戦していると、少しでも解説が理解できるように、今度はルールを覚えたくなるもの。
「それで羽生さんが書いた初心者用の本を買ってきて、勉強を始めたんです。一回指したら、すごく楽しい。将棋の魅力はたくさんありますけど、一番は集中できるところ。ほかのことを一切考えないで、打ち込めるんですね」
まったくのビギナーでも、アプリやパソコンの将棋ゲームを利用すれば、駒が動けないマスには移動できない設定になっていたりするから、簡単に楽しめる。
「実家で家族みんなが集まるときは、父や親戚と将棋です。だいぶ酔っ払っているので勝ちますよ! 父と私の姿を見て、母も最近になって『私も覚えようかしら』って言っているんです」
このように、将棋はスポーツと違って、年齢差や男女差を超えて一緒に楽しめるコミュニケーション・ツールでもあるのだ。
「私は責められるのが苦手で、つい守りにばかり駒を使ってしまって、いざっていうときに攻められない。将棋を差すと、私がビビリだということがバレてしまうんです(笑)」