世界中から選ばれた舞台芸術の採点「リンカーンセンター・フェスティバル」がアメリカ・ニューヨークで開催中だ。祭典のトップバッターとして公演を行った中村勘九郎(32)率いる「平成中村座」に本誌は密着した。
「(リンカーンセンターにある)ローズシアターはコンパクトで“芝居小屋”という雰囲気。歌舞伎に向いていますね」(中村勘九郎)
「NYだからと変に芝居をわかりやすくすると芝居がチープになってしまうと思います」(中村七之助・31)
「日本でやっている歌舞伎を、ニューヨーカーにそのままお見せしたいと思います」(中村獅童・41)
今回上演したのは、十八世中村勘三郎が’90年に復活させた『怪談乳房榎』。勘九郎の三役の早変わりや水を使った演出などが見どころの作品は、勘九郎が勘三郎から直接受け継いだ大切な演目だ。
「このお芝居は父の指導のもとにできたものなので、ものすごく思い入れはあります。実は今回の公演の話しがあったときに父がこの演目をやろうと提案したんです。『主人公を)お前と俺のダブルキャストでやろう』というアイデアも話してくれました。だから、今回の公演は父の魂がここに生きているように思います。その意志を受け継ぎ、父に捧げるつもりで、父のような熱さをもって日本の伝統である歌舞伎をニューヨーカーたちに届けたいと思います」
と語った勘九郎の思いが伝わったのか、初日から連日満員御礼&アンコールの拍手が鳴り響く盛況ぶりだ。『ニューヨーク・タイムズ』にも、「まばたきする間の早替りに、客席は花火が上ったかのように沸いた」と観客の熱狂ぶりを報じられるなど大成功に終わった。