「パニック症になる原因は、医学的に、いまもよくわかっていないようです。症状としては突然の動悸、息切れ、めまい、発汗……。私の場合は動悸と息苦しさがいちばんつらかった。症状が進むと、駅や乗り物など人が大勢いる場所や、エレベータや映画館といった閉ざされた空間が怖くなったり、苦痛になることが増えていきます。私の場合ですが、人が大勢集まる場所に行くことになったときは、具合が悪くなったらすぐに駈け込んで、一人になれるトイレの場所を事前に調べておいたりしていました」

 そう語るのは大場久美子(55)。彼女が自身のパニック症闘病をテレビ番組で明かしたのは、2008年1月のことだった。

「仕事では、テレビ番組の収録途中で発作を起こしていた時期もありましたけれど、お尻をつねったり、大きく深呼吸したりして発作をやり過ごしていました。でも、カメラが回ると比較的発作が起きることは少なくて、仕事に支障をきたすことがなかったのは幸いでした」

彼女がパニック症を克服するまでには8年の歳月を要したという。

「どうやって克服したかと言うと、認知行動療法といわれる心理療法でした。当時はまだ心理カウンセラーの資格を取得する前でしたが、いま思うと、誤作動を起こしてしまう脳を自分なりにコントロールすることを自然にやっていたんですね。わかりやすく言うと、危険なことに遭遇すると、誰でも動悸が激しくなったりしますけど、パニック症の人は危険でもないのに脳が『危険だ!』と誤作動して動悸が激しくなったり、息切れがする。そこで私は、自分の”安心アイテム”を増やしていきました」

 彼女の言う”安心アイテム”とは、緊急連絡先のカードだったり、発作が起きたときの対応メモなどのこと。
 
「こうした”安心アイテム”を増やすことで、心理学で言うと『電車に乗れない』という説が崩れていく。それが自信になって、ほかのことも『できる』し『やってみよう』に変わっていく。変わることで元気が出てくるんです。みなさんの身内や身近にもパニック症の方がいらっしゃるかもしれません。本人のなかに眠っているパニック症から立ち上がろうというエネルギーやアイテムが出てくるような見守り方をしていただけると、とても助かります」

 病気を克服し、2011年には10歳年下の会社員男性と結婚した彼女。パニック症を克服するなかで、気持ちに変化が生まれたのだという。

「マイナス思考だった発想を、プラス思考に転換することで、私は『楽になれた』し『ポジティブに生きよう』という気持ちになることができました。彼も、私が生き生きと、楽しそうに仕事をする姿を見るのが『楽しみだ』と言ってくれています」

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