毎週金曜の深夜、テレビ東京系列で個性的なドラマの数々が放送されている。それが「ドラマ24」だ。単なるドラマの枠を超えた存在の番組として、人気を集めている。10月で10周年を迎えたこの「ドラマ24」作品に出演した人たちが、その魅力を語ってくれた。
「源さんのセリフは『ウイッス!』くらいですが、頭の中では『これは未来への布石だ……』とか、いろいろつぶやくんです。そういったモノローグは撮影後に録音するんですが、まじめに読めば読むほどおかしくて。監督も僕も、笑い転げながら録りました」
そう語るのは、過去から足を洗ったスゴ腕の殺し屋「源さん」が秘湯の宿で働きつつ、さまざまな人と関わる日々を描いた『湯けむりスナイパー』(’09年)でテレビドラマ初主演を務めた遠藤憲一(54)。個性的な作品が多い「ドラマ24」の中でも、「ワケアリの大人の人間ドラマに泣ける」と注目を集めた。
「劇的な展開が起こるわけではなく、淡々と源さんの日常を追うドラマ。そして、登場する温泉も商店街も、どこにあるのか具体的な場所は不明。そういうところに不思議な情緒がある、いいドラマですよね。ヌードシーンもよくあって、出演している自分たちのほうが大丈夫か? と思ったくらい。でも、やってみたら意外と大丈夫でした。深夜ドラマらしさを、見た方に楽しんでもらえたんでしょう」
脚本・監督は、『モテキ』などの話題作を相次いで発表している大根仁が務めた。
「大根監督とは、それまで深夜のコントドラマをやっていました。そのときは、僕がアイデアを出すと『いいよ』と自由にやらせてくれましたが、ドラマではまったく演出が違って。何度も『ダメ』を出され、監督に言われたとおりに動く感じでした。事前の打ち合わせなどもなし。監督の頭の中に、イメージがしっかりでき上がっていて、『こういった作品を作りたい』という強いこだわりを感じました」
ベテラン俳優が相手でも、徹底した演技を要求する。監督の作家性が強く打ち出されるあたりは「ドラマ24」らしいといえるが、一方でコワモテな源さんが大げさな独り言をつぶやくなど、独特のユーモアも人気だった。
「『湯けむりスナイパー』特番のラストでは、温泉でいっしょに働いていた捨吉(でんでん)が、被災地の役に立ちたいと宿を去っていく。ドラマの中に東日本大震災のことを盛り込んだのは、これが初めてだったんじゃないかな。その話を、視聴者の方も温かく見てくれた。このドラマ枠には、どこかそんな、やさしい目線を感じるんですよ。できれば、だからまた『スナイパー』の続編をやりたい。年を取った源さんも、マジでいいと思うんですよね」