「『あさが来た』はNHK朝ドラ史上初めて“時代劇”としてスタートしました。江戸時代の町並みなども必要ですし、台本をもらった時点で『これはお金がかかって大変だな』と、思いました」
そう語るのは、NHK大阪放送局編成部で映像デザインチーフ・ディレクターを務める西村薫さん(47)。時代劇になったといっても予算が増えるわけではない。
「役者さんたちが使う、カツラとか着物などの予算は削れませんからね。建物とか背景とか、それ以外の部分で工夫していくしかないのです。困ったことに“豪商”という設定もあって……(苦笑)」
ヒロイン・あさを演じる波瑠は6月の記者会見で、「初めて(お屋敷の)セットを見て、びっくりしています」と語っていたが、その陰には、西村さんら美術スタッフの涙ぐましい努力が。過去のドラマのセットの“再利用”などで美術費を大幅に節約しているのだ。
「(ドラマでは)加野屋の向かいには民家が並んでいます。それも『だんだん』(’08〜’09年)のときに制作した京都の置屋のセットを置いています。『マッサン』(’14〜’15年)では樽が並ぶ大きな倉庫を作りましたが、それを改造して、11月上旬から登場している加野炭鉱の人足小屋を作ったのです」
実は加野屋も今井家(あさの生家)、そして山王寺屋(あさの姉・はつの嫁ぎ先)も同じセットなのだという。
「のれんの色を、加野屋は青、今井家は緑、山王寺屋派赤と、変えて、別の家に見えるようにしました。ふすまの色もそれぞれ異なり、視聴者が『この家は山王寺屋』などと、ピンとくるようにしています。インターネットでは視聴者からも『間取りが似ている』などのコメントがありますが、よく見ていらっしゃいますね(笑)」
西村さんたちスタッフの奮闘も『あさが来た』高視聴率の秘密に違いない——。