「お父さんは、天ぷらが好きなんです。アサリの剥き身に長ネギを混ぜたもので、油がはねるから大変ですけど好きなんですよ。退院して元気になったらきっと食べると思うので、つくってあげたいですね」
そう本誌の取材に語っていたのは、桂歌丸師匠(80)の妻・冨士子さん(85)だ。5月15日に発表された歌丸師匠の退院発表。13日に無事退院したといい、当面は自宅療養を続けるという。
だがその直前の8日には「5月公演全て休演」というショッキングなニュースも報じられていた。4月16日に入院した当初は「4月中席は休演。30日前後まで入院」ともいわれていたなかでの“再休演”発表。関係者からも心配の声があがっていた。
実は退院直前、本誌は横浜市にある歌丸師匠の自宅へと向かっていた。そこで冒頭のように、冨士子さんは師匠の様子を語ってくれたのだ。
また昨年5月で『笑点』を卒業した歌丸師匠だが、その後も高座にあがり続けてきた。だが今年1月にも肺炎で入院するなど、体調は万全といえなかった。
そんななか師匠は『週刊ポスト』17年2月24日号で《今回は酸素吸入器をつけて高座に上がりますが、それでも上手く喋れないようなら……引退するしかない、と考えています》と発言。この言葉は“「引退」宣言”として報じられた。
だが、冨士子さんはきっぱりと否定する。
「それは言っていません、引退はね」
突然声が大きくなり、力がこもる。「師匠としては、やはり“生涯現役”を貫くおつもりですか?」と聞くと、こう答えた。
「そうでしょうね。自分でもいつもそう言っていますから。退院してもそのまま復帰とはいかないでしょうが、気持ちの上では『すぐにでも』と思っているのではないでしょうか」
高座で逝けたら本望――。病床にあっても落語家として生涯をまっとうしたいと、歌丸師匠は“執念”をみせているという。
「病室で稽古はさすがにしませんけど、落語の本を持っていっています。それを読んでいますね。だから、これからも一応まだやるつもりなんだと思います。私も好きなことをやってもらうのがいちばんいいと思います。引退して夫婦でゆっくり余生を楽しむなんて考えたこともありませんから」
これからも歌丸師匠は、夫婦二人三脚で“生涯落語家”としての道を歩み続けていく――。