連続テレビ小説『べっぴんさん』の23週は、「あいを継ぐもの」。すみれ(芳根京子)・紀夫(永山絢斗)夫婦と君枝(土村芳)・昭一(平岡祐太)夫婦は、さくら(井頭愛海)と健太郎(古川雄輝)の結婚を受け入れようとするが、一人息子と一人娘の結婚のため、家の継承問題でこじれてしまう。さくらと健太郎は、両親たちの考えが古いと主張するが聞いてもらえない。さらに健太郎は坂東家に婿に入っても構わないと言い出すと、「聞きたくないわ!」と言葉を遮る君枝。店を後にする。
すみれ夫婦は義兄の潔(高良健吾)とゆり(蓮佛美沙子)の家を訪ね、坂東家の存続について相談する。「僕としては、娘の代で五十八さんから引き継いだ坂東の名を終わらせるなんてことはとてもじゃないができません」と紀夫。その言葉を聞いたゆりは、坂東家の長女である自分が潔のもとに嫁いだせいで家のことをすみれに押し付けてしまったと謝る。
「何言うてるの。私は紀夫さんに出会って、幸せになることができた。よかったなあって心から思ってるのよ」とすみれ。帰宅した紀夫は、坂東の家を継がないのであれば、健太郎との結婚は白紙だとさくらに告げるのだった。
翌日、勝二(田中要次)と龍一(森永悠希)の世界料理の店ですみれ夫妻が食事をしていると、潔が訪ねてくる。さくらのことを心配する潔は、自分がゆりと結婚したときのことを話して聞かせる。潔の父・正蔵(名倉潤)も、すみれとゆりの父・五十八(生瀬勝久)も、最後は子供たちの幸せを優先してくれたと振り返り、紀夫を婿に出した経験を持つ実父・田中五郎(堀内正美)に一度会ってみたらどうだろうかと提案する。
潔のアドバイスを受けて、五郎を家に招いた紀夫。自分を坂東家に婿養子に出したときのことを聞きたいと話を切り出すと、五郎は「いくつになっても、一番嬉しいのは子供が幸せなことだからな」と言い、さらに紀夫の初恋の人がすみれだと知っていて、2人がうまくいくように祈って結婚させたと打ち明ける。
親の思いを初めて知って驚き、照れる紀夫。さくらが結婚したいと言っているが、坂東家を守るためにさくらに婿を取りたいと相談する。すると「家を継ぐというのは何なのだろうか?」と五郎。大事な息子の紀夫の名字が変わっても、今、生きている。それは、これまで命をつないでくれたご先祖様がいるから。「長い長い歴史の中、何事も形を変えていく。それでも、想いだけは、想いというのは形を変えて引き継がれていくもんじゃないのか
と語るのだった。
その晩、紀夫は、棚に飾られた家族写真を見ながら五郎の言葉を思い返す。「もう坂東営業部という名前はないけど、お義父さんの信念や思いはオライオンにある。もちろん僕らの中にも
とすみれに告げる紀夫。翌日、すみれたち夫婦は君枝と昭一と会い、さくらが村田家に入ることを許す。そしてさくらに、坂東家は五十八とはな(菅野美穂)の頑張りが坂東家の始まりなのだと話して聞かし「おじいさまとおばあさまの思いだけは引き継いでね」と微笑むすみれ。
すみれたちは、さくらと健太郎の結婚の報告と仲人を依頼するため、大急百貨店の大島社長(伊武雅刀)の元を訪れる。仲人を快諾した大島との会話の流れから、さくらの名前の由来をすみれと紀夫に聞く健太郎。すみれは、ゆりと自分の母の名が「はな」だったため、2人娘は花の名前を付けてもらったと説明する。「お母さんのように、そのまたお母さんのように、美しく花咲く人生を送って欲しい。そんな想いを込めて、さくらと名付けた」と紀夫。
こうしてさくらと健太郎の結婚式を無事終え、帰宅したすみれたち。一人娘を嫁に出し、寂しく感じていると、そこにさくらと健太郎がやってくる。「私たち、今日からこっちでお世話になっていい?」とさくら。村田家に住むと職場と家が一緒で、健太郎はそれが長年嫌だったと説明する。顔を見合わせ微笑むすみれと紀夫。2人きりの生活になると思っていた矢先に娘夫妻との同居と、思わぬ展開に驚きつつも、嬉しく感じるのだった
昭和48年の春。さくらと健太郎の結婚から3年の時がたった。さくらは子どもを身ごもり、健太郎は武(中島広稀)の後を引き継いでキアリスの開発宣伝部長に昇進することに。本店を任された健太郎は、大手商社社長の古門(西岡徳馬)から「成長のスピードが重要」という助言を受け、売り上げを上げるためキアリスを大きく変えようと奔走する。「大事なのはスピード。普通の人が10年かけてやることを、自分は1年でやる。これを機に僕は、自分の力を試したいんや」とさくらに宣言するのだった。
キアリスの本店のリニューアルを健太郎に任せるすみれたち。リニューアル後の店内を見学すると、店の最前列の棚にキャラクターがプリントされたTシャツや大人の女性向けのストッキングなどディスプレイされているのを見て戸惑う。「これって、キアリスかな?」とすみれ。戸惑いを隠せないすみれたちに、健太郎は「これからのキアリスです」と自信満々に語る。
キアリスを急成長させたいと奔走する健太郎は、さくらが生まれてくる我が子を思って生み出したキアリスの新キャラクター「サミーちゃん」を利用しようと考える。さくらはライセンスビジネスのために作ったキャラクターではないと反対。話を聞いていたすみれも、焦らずもっと時間をかけるべきだと諭すが、健太郎は今の時代に合ってないと聞き入れない。「会社を大事に思う気持ちはどの社員にも負けてないと思ってる」と健太郎。
そんな折、潔は社員たちから、オライオンが契約しようと思っていた路面店を栄輔(松下優也)の会社「エイス」がことこどく契約していると聞く。栄輔が日本中にショップを展開しようと躍起になっていることを知り、言い知れぬ不安を感じる潔。東京にいる栄輔の元に向かう。
一方、突然、現れた潔に驚く栄輔。居ても立ってもいられず駆けつけたという潔の真意が理解できない。「膨らみ続けた風船は、いつかは爆発する。今のやり方を続けたら、お前は爆発するぞ」と忠告する潔。その言葉はきちんと心に留めておくと答える栄輔だったが、立ち去る潔を見つめるその表情からは笑顔が消える。
それからしばらくして、臨月を迎えたさくらは無事に女の子を出産する。孫の誕生に喜ぶすみれたち。健太郎が生まれてきた我が子につけた名は「藍」。この時期に咲く可憐な花で、藍色は、やすらぎを与えるからだと名前の由来を説明する健太郎。「周りの人に安らぎを与える優しい女の子になってほしいと思って。
健太郎による拡大が進むキアリス。店の真ん中にはサミーちゃんグッズが置かれ、創業以来の看板商品だった肌着は店の奥の棚に置かれている。ある日、すみれは偶然キアリスが変わってしまったと嘆く女性客の声を耳にする。一方、娘を出産したさくらだったが、孫を溺愛する君枝が度々家を訪ねてくるようになり、悩まされる。その不満を健太郎に相談しているうちに夫婦仲にも亀裂が生じてしまう。
そんな折、「レリビィ」にキアリスのメンバーと家族が集まり、紀夫の8ミリカメラの上映会が開かれる。藍の姿を見ながら、自分たちが子育てをしていたころを思い出すすみれたち。明美がさくらにおしめの使い方を教える様子を見ながら、すみれにあるアイデアが浮かぶ。「残せないかな?こうして知識を映像に。そしたら、もっともっとこう分かりやすく、いろんな人に伝えられるんやないかな
。良子や明美も「わくわくする」と、映像版のキアリスガイドに心を躍らせるのだった。
11月になると、オイルショックによって日本の経済は大混乱に陥った。すみれや紀夫は、キアリスの経営拡大に対し、今こそ慎重姿勢をとるべきだと訴えるが、健太郎だけは、守りに入ることに反論を続ける。そこにすみれはこう切り出す。「今、必要なものは赤ちゃんのものだ」と。そして、こんな状況でも赤ちゃんを笑顔にしてあげたいし、お母さんたちの気持ちに寄り添ってあげてほしいと説く。「それがキアリスの基本やもの」と良子。経営陣の意見にすぐに同意した健太郎だったが、その口からは「需要」「供給」と経営用語しか出てこない。うつむき悲しい表情のすみれたち。
いっぽう一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった栄輔のエイスは、売り上げが下がり始めたことを理由に古門から見放され、資金繰りに失敗してしまう。KADOCHOを後にする栄輔に玉井(土平ドンペイ)が声をかける。「ボロボロの時代に拾ってもろて、こんな立派にしてもろて、あんたには感謝してる。そやけど、一緒に泥船に乗って沈むことはできん」と。エイスはついに破綻し、社長の栄輔も行方をくらませる。
ある日、ゆりの家を訪ねる紀夫とすみれ。そこに、憔悴した栄輔の姿を見て驚く。「ばったり大阪で会ってな」と栄輔をかくまっていたことを明かす潔。会社更生法を申請して、それをもって会社をもう一度立て直すと言う栄輔に「意味がない」と制する。「自己破産してゼロになるんや。そこから自由な発想をして一から始めるんや」と潔。身を寄せる場所を失った栄輔に、自分の家にいたらいいと言って楽しそうに笑う。「また一緒なんて、闇市のころみたい。懐かしいわ」とゆり。そんな2人を見つめ、栄輔は目を潤ませるのだった。
第24週の『べっぴんさん』は、エイスが倒産し、家も仕事も失った栄輔(松下優也)は、潔(高良健吾)とゆり(蓮佛美沙子)の家に居候の身となっていた。一方、エイス倒産のニュースを受け、キアリス・社長の紀夫(永山絢斗)は、これまでの積極的な経営から、慎重な方向に舵を切ろうとしていた。しかし、開発宣伝部の部長となった健太郎(古川雄輝)はその方針に反対。議論が進まない中で、すみれ(芳根京子)が突然、「創業の思いを次世代に引き継ぐための映画を作ろう」と提案し、キアリスの映画作りが始まることに。龍一(森永悠希)に紹介されたプロカメラマン・亀田(上地雄輔)の助けを借りて、内容や役割分担が決められていく。