映画『万引き家族』で、カンヌ国際映画祭の最高賞のパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督(55)。『誰も知らない』『そして父になる』『海街diary』など数々の作品を生み出してきた映画界の“巨匠”だ。
日本人監督作品としては、実に21年ぶりとなる快挙を成し遂げた是枝監督。そこには、特別な思いが込められていたという。
「是枝監督は、いわゆる“ウケるモノ”を分析して世に出してきました。ただ、そこには目的がありました。それは『商業作品で得た資金をもとに、自分が本当に撮りたい作品を作る』というものでした。そして今回の『万引き家族』こそ、監督が撮りたかったもの。構想に10年もかけた意欲作です。それがパルム・ドールに輝いたのですから喜びもひとしおでしょう」(映画制作会社関係者)
これまで家族をテーマに撮り続けてきた是枝監督は9歳から28歳までの約20年、東京都清瀬市にある旭が丘団地で暮らしてきた。16年公開の映画『海よりもまだ深く』には、自身が暮らした団地での体験が描かれている。そんな是枝監督が映画監督になるため背中を押した人物、それは彼の父親だ。親友の母が振り返る。
「コレちゃんが映画の道へ進もうとしたとき、お母さんは『もう少し堅実な仕事に就いたほうが……』と心配していたそうです。でもそんなとき、お父さんは『人生は一度きりなんだから、自分の好きな道を選びなさい』と言ってくれたそうです。お父さんは戦争で足を負傷されたそうで、リハビリに通われていました。そんな経験をされたお父さんだからこそ、息子には夢に向かって進んでほしいと思われたのかもしれませんね」
だが残念ながら、その父は息子の成功を見ることなく早逝してしまう。是枝監督は父の言葉を胸に、いっそう夢に向かって邁進した。そんな思いが“家族映画”の原動力にーー。是枝監督は『海街diary』についてのインタビューで、こう語っている。
「死んでしまったからって、どこかにいなくなっちゃうわけじゃない。なぜかって言うと“死んだ人のことを考える時間”がどうしたって、増えるから」
背中を押してくれた父はきっと、今回の受賞を祝福してくれているだろう。