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2月22日の手術で、舌の6割と首のリンパに転移した腫瘍を切除した堀ちえみ(52)。失った舌の左側の部分には、太ももの組織を移植。術後の経過は良好で、3月5日からはリハビリも開始した。だが翌6日のブログで明かしたのは過酷な現実だった。ブログでは嚥下チェックがあったことを報告。とろみのついた水、続いてゼリーを喉に持っていくというものだった。そこで彼女はこうつづっている。

 

《味わうどころか、食べる事すら出来なくなっている状況に、ショックを受けました。それと同時に、今回のリハビリの長さが、想像出来てしまい愕然としました》

 

いったい、彼女にはどんなリハビリが待ち受けているのか。

 

「堀さんのように舌を6割ほど切除して再建手術後も行った後のリハビリですが、『食事』と『発音』の訓練が必要です」と語るのは、静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科の言語聴覚士・神田亨さんだ。

 

「『食事』は、食べること自体がリハビリです。たとえ歯が全部あっても、舌がないと咀嚼できません。舌には食べ物を喉の奥へと送り込む役割があり、切除手術をするとそれが難しくなるのです。そのため固形物が食べられなくなります。だからまず、とろみのついた水やどろどろとしたミキサー食をのみ込む訓練を行います。そこから徐々に粒のあるものへと移行していきます。『発音』は、構音訓練というリハビリを行います。アーと発声すること自体は練習しなくてもできます。しかし舌は再建しても自由に動かせないので、『た』や『か』などの音が発音しづらくなる場合があります。まずはそうした出にくい音が入った文章を音読したりすることになります」

 

以前は普通にできていたことを、こうした訓練によって地道に取り戻していかなければならないのだ。しかも、この最初の3カ月間が“正念場”になるという。

 

「経過に問題がなければ入院自体は約1カ月。その後は自宅や通院で訓練を続けるので、訓練期間は合計3カ月~6カ月が目安です。だいたいそれくらいで状態が落ち着きますが、その後の経過には個人差があります」

 

だが慶應義塾大学病院リハビリテーション科の言語聴覚士・安藤牧子さんはこう語る。

 

「リハビリは3カ月~半年が機能回復の限界という点ですが、大きな変化という意味ではそのとおりでしょう。しかし質的変化は半年後、1年後でも十分に可能性があります。たとえば上に動かしづらくなった舌を補助する舌接触補助床という器具もあります。これによって上顎と舌が接触しやすくなり、発音や食事も容易になります。義手や義足と似た考え方です。家族のサポートも大切です。たとえば発音が聞き取りにくかったときは傷つけたくなくてわかった振りをするよりも、『今のわからなかった』と率直に伝えたほうが本人のためになります。そうしたフィードバックも、改善への手助けとなるでしょう」

 

手術直前、堀は『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)に出演。そこで自身の楽曲『リ・ボ・ン』を熱唱し、「負けません」と語っていた。

 

「また歌えるようになるか。これはご本人も周りの人たちも気になるところだと思います。舌の半分以上を取った場合、通常だと100%は難しいかもしれません。何かしらの変化は必ずあります。ただ一般的にこのくらいまで回復するという予測を上回ってよくなる場合もあります。歌い方を工夫したり、出にくい音を避けた歌詞にしたりすることもよいかもしれません。つまり今後、どれだけのことができるかによって変わってくるということ。まだまだ未知数だと思いますよ」

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