「そのとき『三味線やりたいんだよね』とお話しされていたんです。僕は弟子をとらないので『よかったらどなたか紹介しますよ』と伝えたのですが、『いやあ、『紙の舞』を演奏したいからなぁ……』と。ただ、お酒の席でしたし、本気ではないだろうなと思っていたんです。
しばらくして、今度は志村さんのテレビ番組のゲストに呼んでいただいて、その収録後に『本当に三味線をやりたいので、連絡先を交換しませんか』とおっしゃるので真剣なお話だとわかったんです。それからは週に2~3回、稽古をやっていました。休みは入りますが、だいたい2時間くらいです」
志村さんは持ち前の集中力と努力でたちまち演奏できるようになっていったという。
「もともとギターを演奏されていらっしゃったので、とても耳がいい方でした。それに加え、練習も重ねていたと思うんです」
志村さんのセンスと努力を物語る一つのエピソードがある。稽古を始めてまだ半年くらいしかたっていないころ。テレビ番組の企画で志村さんの三味線に、ビートたけし(73)がタップダンスを合わせることになった。上妻さんがその収録に付き添うと――。
「本番前に三味線を練習し始めた志村さんを見たたけしさんが『そんなに弾けるのか』と驚かれて。たけしさんも楽屋でタップの練習をし始めたんです。若手の芸人さんたちがそれを直立不動で見ていましたね。たけしさんは長くタップをやられていると思うのですが、あの短期間の練習で、たけしさんをも本気にさせるというのはすごいことだと思いました」
4年前、上妻さんのアルバムの発売を祝して、志村さんがコメントを寄せたこともある。そのなかには、《お稽古の時間より呑んでいる時間の方が長かったかもしれませんが(笑)》というくだりも。