コロナ禍によって、あらゆる業界のあり方が変わってしまった2020年。テレビ界ではアクリル板やマスク姿でのロケなど撮影手法が大きく変化するなか、バラエティ番組でもある地殻変動が起こっていた。今年に入ってネタ番組が急増しているのだ。
20年に立ち上がった主なネタ番組(単独の特番も含む)を挙げると、『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)、『ザ・ベストワン』(TBS系)、『NETA FESTIVAL JAPAN』(日本テレビ系)、『爆笑問題VS霜降り明星 第七世代と真剣勝負せよ! ネタジェネバトル2020』(テレビ朝日系)、『お笑い二刀流MUSASHI』(テレビ朝日系)。これら以外のものも合わせると今年だけですでに10本近くのネタ番組が立ち上がっている、まさにブームといえる状況だ。
しかし、なぜ20年に入ってネタ番組が隆盛を誇っているのか。お笑い評論家のラリー遠田氏に話を聞くと、まずテレビで見ない日はない霜降り明星、EXIT、ミキ、四千頭身などに代表される“お笑い第7世代”の活躍があるという。
「第7世代の若手芸人が注目されているというお笑いのトレンドがありますよね。そういう人たちのネタをまとめて見せる番組として、ネタ番組が機能しているという側面があると思います」
また、テレビ局側の思惑も影響しているようだ。
「これまでは世帯視聴率が重視されていたので、視聴率を取るには高齢者に向けた番組を作るというのがセオリーでした。しかし、近年は世帯視聴率よりも個人視聴率が重視されるようになりました。高齢世代はCMを見ても積極的に購買行動をとらないので、20~30代といった若い世代に受ける番組を作ったほうが、スポンサーの受けもいい。そこで、若い世代に向けたお笑い番組やネタ番組の需要が以前よりも高まっているのでしょう」
2000年代中盤には『エンタの神様』(日本テレビ系)をはじめとする、『笑いの金メダル』(テレビ朝日系)、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)といった数々のネタ番組が誕生。そこから火がついた今も活躍するお笑い芸人が多数誕生するお笑いブームが起こっていた。ラリー氏は、現状のネタ番組ブームにも当時に近い勢いを感じるという。
「少なくとも、第7世代のような形で若手の芸人がまとめて何組か注目される現象は、ここ数年なかったことです。これは一つのブームといってもいいでしょう」
またコロナ禍によって暗い話題が続いたことも、ネタ番組ブームを後押ししているようだ。
「今は情報番組や報道番組などでは連日、コロナの話題ばかり。どうしても見ているだけで気が滅入ってしまう。そのような状況では、バラエティの枠ではもうちょっと明るく、何も考えず笑える番組のほうがいい。テレビ局の編成としてはそういう思惑もあるのかもしれません」
また、まもなく放送される漫才大会の代表格である『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)も時代とともに変化。昨年からは準決勝をライブビューイングで配信するなど、より大きなムーブメントを起こす存在となっている。
「2015年から出場資格が従来の結成10年以内から15年以内に変わり、比較的芸歴が長い人も出場できるようになりました。また、大会を続けているうちに出場者が切磋琢磨していくということもあって、年を追うほど大会のレベルは上がっています。
また、かつては予選の動画配信などもほとんど行われていなかったのですが、最近では予選のネタ動画がどんどんネットでも公開されています。それがSNSなどで取り上げられることで、大会全体が盛り上がっていけばいいという主催者の思惑があるのでしょう」
若い世代の活躍と時代の要請も受けて、まだまだ盛り上がりを見せるネタ番組。来年はどんな潮流がお笑い界に生まれるのだろうかーー。