住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代にはやった映画やドラマの話。同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。
「ジブリ作品は不況に強く、番組改編期に視聴率を稼げるコンテンツともいわれるそうです。しかも、これだけ再放送繰り返されているのに、そのニーズはまったく衰えていません」
そう語るのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(53)。
『鉄腕アトム』(’63年放送開始)から劇場版『鬼滅の刃』(’20年公開)に至る、日本のメジャーなアニメのなかで、ジブリ作品は“子どもだけでなく、大人も十分に楽しめる”と、アニメの裾野を広げた役割を果たしているという。
「『宇宙戦艦ヤマト』(’74年放送開始)も大人にウケる作品でしたが、宮崎駿さん、高畑勲さんの作品は、子どもを単に子ども扱いしない、大人の視点がありました。含みのある、奥の深さを感じさせるテーマが描かれているのです」
その代表作が、未来を描く『風の谷のナウシカ』(’84年公開)だ。
「それまでのアニメが描いた未来の多くは、ロボットが出てきて戦闘に勝つような展開。しかし、『ナウシカ』では“明るいわけでも、科学技術が発達した夢の世界でもない”未来が描かれました。初めて見たとき、衝撃的なエンディングが印象的な映画『猿の惑星』(’68年公開)のように、環境問題を含め、どのように人間が文明社会を進化させていくべきか、問いかけられたように感じました。ただ、『ナウシカ』は暗いばかりでなく、未来に生きる登場人物たちの人間愛や、家族の温かさも細かく描かれている。だから、見終わった後に決して嫌な気持ちにならず、家族や友達と話したくなる作品になっているんです」
大人も十分に楽しめる重厚なテーマの世界観に、子どもがすんなりと入っていけるーーそれが“アニメの力”なのだろう。
「『魔女の宅急便』(’84年公開)や『となりのトトロ』(’88年公開)でも、見る人が『アルプスの少女ハイジ』(’74年放送)など幼いころから慣れ親しんだ、やさしいタッチで心がなごむキャラクターが多数生み出されました。また、『未来少年コナン』(’78年放送)に衝撃を受けたというアニメ好きがいるように、セル画の枚数を増やさなければ表現できないような、しなやかで力強い動きのキャラクターも特徴的。こうした魅力があってこそ、物語の世界につい入り込んでしまうのでしょう」
ジブリ作品は海外にも発信され、インバウンドを呼び込んでいる。
「『子どものころに見て、日本が好きになった』という留学生も多くいます。まさに、ジャパニーズアニメの代表格なのです」
「女性自身」2021年4月6日号 掲載