■玄関には大きな“悪運を払う護符”が
失意の日々も励ましてくれたであろう母や姉。実は誕生日当日の実家の玄関には、東京では季節外れにも思える大きなしめ飾りが飾られており、護符には《蘇民将来子孫家門(そみんしょうらいしそんかもん)》の文字が……。
ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんに聞いた。
「蘇民将来という人物に歓待されたスサノオノミコトが、そのお礼に“茅の輪”というものを授与し、“これを身につけていれば疫病などの災いから逃れられるだろう”と伝えたという逸話があるのです。
伝説は各地に伝わっています。岩手県には蘇民祭という祭りがあり、“蘇民将来”と書かれた護符の入った袋を奪い合います。お札には疫病退散や災厄除去といった御利益があるといわれています」
伊藤家に飾られていたのは三重県の伊勢・志摩地方のしめ飾り。伊藤の母方の祖父母の家が伊勢神宮のそばにあり、そのためこの風習を知っていたのだろう。
「もともとは疫病退散の護符ですが、神社によってはさまざまな御利益を付加しています。伊藤さん一家も“これ以上の災厄から逃れたい、悪運を払って出直したい”という気持ちがあって、飾っているのかもしれませんね」(鵜飼さん)
ちなみに護符の裏には《急々如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)》という文字が書かれているという。”急々に律令の如く行なえ”という意味で、陰陽師や祈祷僧は、呪文の終わりに添えて悪魔払いのために用いていた。
“天狗になっていた”という批判も受けた伊藤だが、護符の力で、その天狗ぶりも消えるだろうか。