■鴈龍さんの死を契機に、母娘の関係が……
老いた親と子が、急に別れて住み始めるケースは、「かなり珍しい」と話すのは、ライターで老年学研究者の島影真奈美さんだ。
「高齢の親子が別々に暮らすこと自体はよくありますし、一人暮らしの高齢者も、年々増えています。
しかし82歳の方が、子供と長年同居していたのに、急に一人暮らしを始めるというケースは、あまり聞いたことがありません。玉緒さんは80代前半ですが、この年代の女性で介護が必要とされるのは、だいたい2割強。肉体的にまだまだ元気な方も多いです。
娘のAさんの体調が悪くて“逆介護”だったのなら、母親である玉緒さんのほうが『もう背負いきれない……』と判断して、母娘が離れたのかもしれませんが……」
玉緒は、1962年に勝新太郎さんと結婚。夫の倒産劇や大麻事件など多くの騒動にもめげずに、Aさんと鴈龍さんを育て上げた。だが2年前、鴈龍さんは暮らしていた名古屋の部屋で、急性心不全のため「孤独死」するーー。
「玉緒さんにとって、息子・鴈龍さんを一人前の俳優にすることは長年の悲願でした。制作サイドに頭を下げて回り、バラエティ番組や舞台に一緒に出演させるなど、心を砕いてきました。
でも、鴈龍さんはなかなか役者として成功をつかめず、晩年は仕事もなく、経済的にも玉緒さんの援助に頼り切りになっていた。2017年ごろに、玉緒さんは援助をやめたのです。悲劇はその後に起こりました。
援助の打ち切りについては玉緒さんとAさんに温度差がありました。鴈龍さんがそのまま亡くなってしまったことが、Aさんとの母娘関係に不協和音を生んだのかもしれません。鴈龍さんの死後、母娘の間で意見や感情の食い違いが見られるようになり、言い争いなどが増えるようになったのです。
ちょうど春にも、Aさんが住むマンションのローン返済も終えていたところでした。そして2人で話し合い、玉緒さんが家を出るという結論になったと……」(前出・別の中村家の知人)