住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代に夢中になったドラマの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’80年代”を振り返ってみましょう――。
「『男女7人夏物語』(’86年・TBS系)は、日本の若い世代に自由恋愛を促した最初のドラマともいわれ、大学の社会学の講義でよく取り上げられます」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(53)。物語の冒頭で、主人公の明石家さんまと、相手役の大竹しのぶが、一緒のベッドで寝ているシーンが象徴的だという。
「さんまさんが起きたとき“これ誰だ?” “したのか、しなかったのか?”という不安から、慌てて友達に電話をかけるのですが、それまでの日本の男女関係の常識では、恋愛・結婚・出産(セックス)が三位一体とされていました。“結婚を約束していない男女が、ホテルに行くなどけがらわしい”という描き方をされていた昭和のホームドラマの常識を、冒頭のシーンで堂々と覆したのです」
ドラマには都会の流行が随所に織り込まれ、のちのトレンディドラマの礎ともなったという。
「さんまさんは人気職業だったツアーコンダクター、賀来千香子さんはコンパニオン経験アリという設定でした。そして奥田瑛二さんや片岡鶴太郎さんなど、友人と集まるのはおしゃれなカフェバー。ホームパーティで鶴太郎さんが料理を振る舞うシーンなども、料理をする男子が少なかった時代だったため、新鮮に映りました」
ドラマの内容だけでなく、大ヒットしたテーマソング『CHA-CHA-CHA』(’86年)の使用方法も巧みだったという。
「本編が終わってからエンディング曲が流れるというのが一般的だった当時、『男女7人夏物語』では、ドラマが佳境に入り、セリフも続くなか、かぶせるようにテーマ曲が始まりました。この曲のイントロが流れると“何か始まるぞ!”とワクワクしたものです。そして曲と同時に、ドラマも終わる。こうした新しい手法を用いた初期のドラマともいえます」
さらに女性の社会進出に関しても、大きな問題提起をしていたという。
「ドラマ放映と同じ’86年に、男女雇用機会均等法は施行されましたが、まだ7割近い女性が“寿退社”する時代で、女性が一生働ける職場は、実際にはほとんどありませんでした。でも、『男女7人夏物語』では、さんまさんと大恋愛をしていたしのぶさんが、最終回でキャリアを優先して海外に渡航。そんなシーンにも、当時の女性のあこがれが詰まっていました」
時代の先端ばかりでなく、その先の未来までを描き切っていた作品だった。