「やっと、誰かから決められたわけでもない“自分で選んだ大好きな道”を少しだけ誇ることができるような気がしています」
目に涙を浮かべ、時折、声を詰まらせながら、事前に用意してきたメモを読み上げていた神田沙也加さん(享年35)。2018年4月に行われた「第四十三回 菊田一夫演劇賞」の授賞式でのことだ。
同賞は、大衆演劇の舞台で優れた業績を示した演出家や俳優、スタッフを表彰するもの。’17年の上演されたミュージカル『キューティ・ブロンド』での主演が認められての受賞だった。のちのインタビューでこのときのことを沙也加さんはこう話している。
《初めて『よくできました』のハンコをいただいた。うれしかったし、この賞に恥じるわけにはいかない》(2021年5月24日付「スポーツ報知」)
16歳のときに映画『ドラゴンヘッド』で本格的に女優デビューした沙也加さんが、“自分の選んだ大好きな道”と語った舞台、ミュージカルの道に足を踏み入れたのは2004年のことだ。
「宮本亜門さん演出のミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』で舞台初出演。SAYAKA名義でデビューしてから3年目で、沙也加さんは17歳。オーディションを経て手に入れた役でしたが、初めてなだけに不安でいっぱいだったようです」(芸能関係者)
そこからミュージカル女優としてのキャリアを積む。2013年のディズニー映画『アナと雪の女王』のアナ役にオーディションで選ばれると改めて注目を浴びたが、それまでは順風満帆とはいえない時期も過ごしてきた。
高校卒業を機に自分を見つめ直したいと芸能活動を休止し、アルバイトも経験して、このまま芸能界を引退しようとも考えたこともあった。
「芸能活動を辞めてしまうのはもったいないと、大地真央さんに誘ってもらったのが、2006年の舞台『紫式部ものがたり』。沙也加さんは、大地さんを“第2のママ”と呼んでいて憧れの人。遺作となった舞台『マイ・フェア・レディ』は大地さんの代表作でもあって、沙也加さんにとっては“目標だった”と話していた大切な役でした」(前出・芸能関係者)
“自分の力で”と積み重ねて築いたキャリア。来年4月には舞台『銀河鉄道999 THE MUSICAL』の出演も控えていた。
初舞台から14年で受賞した、前出の2018年の菊田一夫賞の受賞のスピーチを、沙也加さんは次のように締めくくっている。
「これから携わる作品により誠心誠意向き合い、がんばってやっていきたいと思っております。そしてまた、14年が経ってもお話しできるように、長く役者をやっていられたらと、願わずにはいられません」
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