■脱・地政学的な考え方も大事
沖縄では’95年に米兵が小学生の少女を暴行する事件があった。さらに戦闘機や軍用ヘリコプターが墜落するなど、米軍が駐留する影響で、沖縄県民の暮らしが脅かされているという側面もある。山崎教授は中田を批判する。
「国防のため、日本は沖縄に負担を押し付けてきました。少しでも沖縄から基地の負担を減らすにはアメリカに交渉するよう、日本の政治家を動かす必要があります。そのためには、沖縄だけでなく本土側からも『沖縄の人を苦しませている。どうにかしてほしい』と声を上げることが大事になってきます。
中田さんが『絶対に沖縄から米軍基地はなくならない』と大多数に語り掛けたことで、『じゃあ仕方ない』と世論を方向付けてしまうかもしれない。『国防の重要性があるから沖縄に基地を置いておけ』という声もさらに強くなるかもしれません。中田さんは“非常に政治的な発言をした”ということに気づいてほしいと思います」
山崎教授は沖縄返還50年にあたり「“沖縄が50年もの間、抱えてきたものは何だったのか”を今一度、国民一人一人が丁寧に考える必要がある」とする。そして、こう結ぶ。
「地政学にはそれぞれの国の政治的意図は見えても、“地上で生きている人の姿”が表面に現れません。そして国益を中心に説明するため、地政学は常に敵がいる世界を想定します。ですが軍事的衝突が起こったときに、どうやって終息させるのか。そして衝突を回避するには、どのように外交をすればいいのかということへのヒントを必ずしも与えてくれる訳ではありません。
現在、ウクライナへの軍事侵攻を行うロシアに対して、国際社会は経済制裁などで圧力をかけています。こういう協調体制の世界観が、地政学には薄いんです。国の対立を前提にして過剰に武装したりすると、当然他国も自国を守るため同じ行動に出ます。この連鎖をこえる脱・地政学的な考え方も大事ではないでしょうか」
中田は、山崎教授の言葉をどう受け止めるだろうか?