4月からNHKラジオ第2放送とNHK-FMで英語講座『中学生の基礎英語 レベル1』(月~金・午前6:00~6:15)の新シリーズがスタートした。公式サイトによると「楽しいストーリー、丁寧な文法解説、豊富な練習問題を通して『英語でやりとりする力』の基礎を磨きます」とのこと。今、その“楽しいストーリー”がSNSで話題を呼んでいる。
連続テレビドラマ小説『カムカムエヴリバディ』に『カムカム英語』として登場したことも記憶に新しいNHKのラジオ英語講座。現在放送中の『中学生の基礎英語 レベル1』はストーリー仕立てのテキストで学習を進めるが、その主人公は、カッパの父と人間の母を持つ女の子なのだ。
「I’m half human, half kappa.」(わたし、半分人間で、半分カッパなの)と自己紹介したのは、泳ぎが得意で日本からアメリカ・ミネソタまで泳いで引っ越してきたという中学生・川原湖子(かわはらここ)。
「I love cucumbers.」(わたし、きゅうりがとても好きなんだ!)とも話しており、実にカッパらしい嗜好だ。
SNS上では《えっ?河童?》《まさかのカッパ》とさっそく話題に。なぜ主人公を父がカッパ、母が人間というキャラクターにしたのか? NHKに取材を申し込むと、番組のデスクとテキストの編集担当者が次のように答えてくれた。
「『中学生の基礎英語』シリーズは2年間で中学校3年分の英語をマスターしようという講座です。英語というのは継続して学習しないと身につかない教科なので、制作側としては1年間聴き続けてほしいという思いがありました」
リスナーに継続的に聴いてもらうために力を入れたのが“ストーリーを面白くする”ことだったという。
「今年度はまだまだコロナ禍でリスナーもなかなか海外に行けないだろうと思い、ストーリーを執筆したクリス・ネルソンさんの出身地のアメリカ・ミネソタ州を舞台にすることにしました。ミネソタは美しい湖がたくさんあるところなのですが、誰ならそんな大自然を満喫できるだろうか?と考え、思いついたのがカッパでした」
主人公の名前にも「湖」の文字が。父はカッパ、母は人間としたところにも制作者のこだわりが。
「カッパだけの家族や人間だけの家族より、カッパと人間の家族のほうが多様性もあるし、面白いストーリー展開にできそうだと思ったんです」
番組が始まって1カ月。このキャラクター設定とストーリー展開をリスナーはどう捉えているのだろうか?
「『湖子ちゃんがすごく可愛い』というコメントをよくいただきます。大人のリスナーからも『朝から元気になれる』『ストーリーが面白い』という声を多くいただいています」
NHK出版から発売されている番組テキストには緑色の髪の毛に小さなお皿を乗せた湖子のイラストが描かれているが、このイラストも人気なのだとか。
「湖子ちゃんのキャラクターデザインは、いちばん苦労したところです。たとえば頭のお皿はどうするか、カッパらしさを出しつつ可愛らしいデザインにするにはどうすればよいのかなども、イラストレーターと悩みましたが、ご好評いただき嬉しいです」
番組には湖子以外にも、アジア系の女の子やノルウェー出身の先生など多様なルーツを持つキャラクターたちが登場する。
「さまざまなルーツを持つ人たちが集まっているというのがアメリカのリアル。それをしっかり反映した物語にしました。アメリカ人としてよくイメージされるような人ばかりではなく、いろいろな人が登場したほうが楽しいと思うんです。多様なルーツや個性を楽しめる感覚をリスナーには持ってもらえたら嬉しいです」
「I’m half human, half kappa.」というのは実生活でもなかなか使う機会がないようにも思うが、実用性という点ではどうなのだろうか?
「『Are you a kappa, too?』というセリフも出てきますが、確かに日常生活では使わないですよね(笑)。でも強烈な例文だと頭に残りやすいのではないかと考えました。そうした例文をうまく応用して役立ててもらえるといいかと思います。
もちろん番組では日常生活で使える例文も紹介していているので、そちらも参考にしていただきたいです。
今後は湖子ちゃん以外にも不思議なクリーチャーが登場する予定ですので、楽しみにしていてください」
制作者の意図通り、ストーリーが気になり続ける1年間になりそうだ。