■吉右衛門の後継者候補は丑之助のみ
『文藝春秋』’23年1月号で菊之助は、吉右衛門さんの逝去から1年たっての思いを語っている。
《そば近くいることを許され、有り難い言葉や指導を受けた身としては、岳父の存在がますます大きくなっているのを痛感するばかりです》
播磨屋と結びつきが強まる中で、菊之助夫妻の周囲である考えが生まれたという。
「瓔子さんをはじめとして、梨園の方々は吉右衛門の名前が空位になっていることを寂しく思っていることは間違いありません。しかし現在、後継者候補は丑之助くんしか残っていないわけです。本来、丑之助くんは将来の菊之助、菊五郎として、音羽屋の看板を背負っていくことが定めなのですが……」(前出・歌舞伎関係者)
寺島はそんな菊之助の葛藤を察しているようだ。
「仮に丑之助くんが吉右衛門を継げば、眞秀くんが尾上菊五郎の大名跡を継ぐ可能性が出てくる。そのチャンスがあるなら何でもするというのが彼女の腹づもりなのです」(前出・後援会関係者)
菊之助が“妻の実家シフト”をしく一方で、寺島と眞秀は菊五郎に接近しているという。
「寺島さんが女優業で多忙なため、眞秀くんが菊五郎さんたちのもとへ、お泊まりに行くこともあるようです。もともと菊五郎さんも富司さんも眞秀くんのことをかわいがっていますから、大歓迎だとか。
また菊五郎さんが元気なうちに直伝の芸をできる限り教え込んでくれればと寺島さんは考えているのではないでしょうか」(前出・歌舞伎関係者)
寺島母子の今後の青写真について、前出の後援会関係者はこう熱弁する。
「多様性を尊重する今の世の中において、父がフランス人で、ハーフの眞秀くんは歌舞伎界にとって、貴重な存在です。また坂東玉三郎さん(72)をはじめ、歌舞伎界の重鎮たちから眞秀くんはすこぶる評判がいいのです。
寺島さんが眞秀くんをドラマ現場に連れてきて、早くから俳優の仕事を経験させているのは、演技に幅が出ることを狙ってのことだといいます。そして知名度を上げて、チケットを売れる歌舞伎役者になってくれればと考えているそうです。眞秀くんが大名跡を継ぐ日が来ても恥ずかしくないような実力をつけるために、親子で鍛錬の日々だと聞いています」
『LEE』’22年12月号で、《こうやりたいという彼の気持ちを尊重しつつ、いろいろ決めています。でも決まり事だらけの歌舞伎をやりたいと思っている限り、致し方ない部分はあるんです》と、梨園の母の難しさを語っていた寺島。執念は実るのかーー。