「撮影が1日延びるとその分、現場の負担が増える。そのしわ寄せが作品の質を下げてしまうかもしれない。観客は君が母親かどうかなんて知ったこっちゃないんだ。つまらんものを見せたら最後、そっぽ向かれて終いだよ」
2月20日に放送されたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』第98回で、生瀬勝久(63)演じる喜劇王・棚橋健二ことタナケンのセリフが“刺さる”と話題になっている。
娘を連れて映画の撮影をしていたスズ子(趣里)が、娘のケガにより撮影を1日休みにせざるを得なくなった。その翌朝、まず共演者のタナケンに謝ると、彼はスズ子の娘のケガを気遣いながら、冒頭のセリフを言い放つのだ。テレビ誌記者は言う。
「タナケンは喜劇王と呼ばれていながら、撮影現場では一切笑顔を見せず、もともと演技経験のないスズ子との初共演から気が進まない様子で描かれました。
スズ子が彼女の芝居に助言を求めても『どうだろうね?』と言うばかりで放任。最終的に台本を無視して、持ち前の関西弁で台詞を言ったスズ子に、ようやくタナケンは『面白いね!』と反応したのです。
それ以降、タナケンはスズ子に『何をやっても、僕が全部受けてあげるよ』と話し、初共演は大成功。そのため2度目の共演となったのですが、スズ子の演技への集中力がそぞろになっていることを彼なりに諭したのです」
タナケン役の生瀬はもともと喜劇とは縁が深いという。
「もともと生瀬さんは兵庫県生まれで、お笑い好き。吉本や松竹の新喜劇をよく見て育ち、同志社大学入学後は喜劇研究会に入っていたほどです。在学中に交通事故で1カ月入院する重傷を負い、『いつ死んでもいいように、後悔しないように生きるんだ』と固く決心して、親に反対されても役者の道に入ることに決めたそうです」(制作関係者)
また、劇中で“クセ強”キャラとして描かれるタナケンだが、生瀬もそうした役を自分が演じることが多いと自覚しているようだ。インタビューではこう語っている。
《結局僕が演じるキャラクターって、どこか勘違いしてるところがあって、それを常識のある人が見た時におかしいと思う。演じてる人がどれだけ真剣な目でおかしなことや世間の一般常識からはずれたことをリアルに演じるか。それを計算したいなと思ってるんですよ》(『日刊スポーツ』2010年4月25日)
だが、生瀬本人も、なかなか“クセ強”な一面を持っているようだ。別のインタビューではこんなポリシーを語っている。
《僕、予定を立てない、理想を持たない、野望を持たない、流れる、というのがモットーなんです》《僕、好き嫌いが激しいんで、気に入らない人はいっぱいいるんです。だけど、気に入らない人とは仕事しなきゃいい。しゃべらなきゃいい。何カ月かしたらお別れするんだから》(『週刊朝日』2020年1月24日号)
前出の制作関係者は続ける。
「生瀬さんは『プライベートで服を買いに行くこときは、店員さんにすべて任せる』とも話されていました。自由な方だなと思いましたね。思い起こせば2年前に出席していたイベントでも『冠婚葬祭には出ない!』と断言していたことがありました。その理由は『結婚式行っても別れるし、お葬式行っても本人がいないから』だとか。同じくイベントに参加していたロバート・秋山さんから『やばいな、この人!』と突っ込まれていたほどです」
タナケンは、また生瀬の当たり役の1つとなりそうだ。