柳下大 D-BOYSを飛び出して、つかこうへいの舞台に挑戦!
昨年逝去したつかこうへい氏の代表作『熱海殺人事件』。
これまでタイトルを変えながら上演がくりかえされてきた有名な作品です。
そして2011年“紀伊國屋つかこうへい復活祭”として、2月4日より『熱海殺人事件』が上演されることになりました!
本作に出演が決まった若手俳優の柳下大さんにお話をうかがってきました。
柳下さんの熱い想いがつまった取材の模様をお届けします!
――現在、稽古の真っただ中ですが順調に進んでいますか?
「最初、台本を読んだときはあまりにむずかしくて理解できなかったんですけど、稽古が始まってお芝居をしていくうちに理解できるようになってきました。始めのころは台詞を頭にいれるのが大変でした」
――台本に目を通してすぐに理解できたわけではなかった!?
「はい。理解してつじつまをあわせようと思ったんですが、しっくりこなくて。じっさい稽古にはいってから台本に書かれてなかったことなどが見えてきました」
――柳下さんは『テニスの王子様』やD-BOYSで舞台を経験されていますけど、つかこうへいさんの代表作であり有名な作品に出られるということについての感想は何かありますか?
「最初はつかさんのことも作品のこともあまり知りませんでした。出演が決まったとき『頑張らなきゃ』とは思いましたが、その後、つかさんや『熱海殺人事件』を調べれば調べるほど偉大な方で有名な作品というのがわかってきて、稽古に入る前はすごくプレッシャーや緊張を感じていました。今は少し落ちついてきましたけど」
――これまで『熱海殺人事件』は何度も再演を重ね、多くの役者さんによって演じられてきました。
「いろいろ調べてみると多くの役者さんが出演されてきて、つかさんの演出を受けたその後にさらに活躍されていったことを知って、つかさんのすごさだったり作品のすごさがわかって、稽古に入るまえは怖かったです」
――じっさい稽古が始まってみていかがでしたか?
「最初の5日間、6日間ぐらいが一番つらかったです。台詞がぜんぜん頭に入らなくてちゃんと理解ができなくて。稽古にはいったとき、ほかの共演者の方は半分ぐらい台詞がはいっているのに自分ははいっていない状態ですごくアセりました。稽古が終わってすぐに家に帰って台本を読んで、どんどん台詞が入りやすくなってきたんですけど、それでも量が多くてどこから手をつけていいのかわからなくて…、という状態が毎日。覚えなければならないというプレッシャーもあって最初のころは全然寝れなかったです。あそこまで必死に台本を読んだのは初めてです」
――有名な作品に出演が決まって周りの反応は何かありましたか?
「D-BOYSの先輩たちからは『本当にうらやましいし、期待しているから頑張って』と。あとは『本当に見るのが楽しみ』と言われてます」
――昨年残念ながらつかさんは亡くなりましたが、もし可能だったら直接指導を受けてみたいと思いましたか?
「出演が決まるまでは勉強不足で知りませんでしたけど、演出家の岡村(俊一)さんだったり共演者の山崎銀之丞さんはつかさんのそばにずっといた方たちなので、今回の作品も、『つかさんだったらこうするだろう』ということを中心にされているみたいで、すごくつかさんに興味が湧いてきましたし、ぜひ指導していただきたいと思いました。本当に残念です」
――先ほどスタッフの方に聞いたころ、チケットがほぼ完売ということですが。
「みんなで盛りあがりましたね。30分で完売したそうです」
――それを聞くと稽古にも力が入りますよね!?
「それがちょうど稽古にはいってアセっているときだったので、力というか余計にプレッシャーを感じ不安になりました。何十回も上演されている作品なので、作品のファンの方は台詞の語尾のちょっとした違いもわかってしまうと思うので、そういうプレッシャーもあります。僕が今回演じるのは大山金太郎という19歳の青年なんですが、歴代の大山金太郎を知っている方もいるといらっしゃいますし」
――役づくりはどのようにされていますか?
「毎回、すこしずつ課題をもらっています。大山金太郎という役は一番お客さんが感情を入れやすい役だとおもうのでそういう部分は気をつけていますね」
――柳下さんが思う『熱海殺人事件』の見どころはどこにあると思いますか?
「毎回稽古をするたびにいろいろ気づかされるんですけど、脚本のすごさ、言葉に隠されているすごさ、つかさんの演出、ですね。あと、カツゼツや声量など、お芝居をする上で勉強になる部分がすごく多い。魅力がたくさんあるからこそ長い間愛されている作品だと実感できました」
――話が少しそれますが、柳下さんがD-BOYSのオーディションを受けたのはやはり芸能界に興味があったからなんでしょうか?
「友達が芸能界にいたのと、皆の前で踊るのがすごく好きでそういうことができるならチェレンジしてみようかな、という軽い気持ちで応募したらグランプリをいただいて……。デビュー当時はお芝居もあまり深く考えずしていた気がしたんですけど、本格的にお芝居をするようになってからは演じる楽しさがわかってきて、この仕事を真面目にやっていきたいという考えに変わっていきました」
――今後の目標や抱負はありますか?
「今は周りのたくさんの方々の助けでお仕事を続けられているんですけど、これが10年20年続くかは自分しだいなので、とにかくいまはそのときの仕事をひとつひとつ大事にして、息の長い役者になりたいと思っています。デビュー当時は早くテレビに出たいとか、早く有名になりたいとか、そういうことばかり考えていましたけど、いまはお芝居が好きですし、とにかく上達していきたいという気持ちが強いので、多くの人に柳下大を知っていただき認めてもらいたいです」
――ジャンル問わずなんでも挑戦したい?
「そうですね。僕なりにやっとドラマと映像と舞台の勝手が違うというのがわかってきたので、そのときに応じたお芝居ができる技術を備えたいと思います」
――デビューして今年で5年目。どんどん可能性が広がってくる時期になりそうですね。
「そうですね。今まではちょっとかっこつけたり、自分でもそういう演技を無意識にやっていたし、自分を超えようという気持ちがなかった。でも、今回、常に満足していなくて、本番までに達成感を100%に持っていきたいし、今までの作品のなかで一番みてもらいたい作品。自分がこれまで出せなかった部分などが今回の作品に全部つまっていると思っているので、これまでとは違う柳下大を見てもらいたいと思いますし、初めて僕に興味を持ってくださった方にはぜったい印象に残る演技をしたいと思っています」
――柳下さんのファンでしたら『これまでとは何か違う』と感じる方もいるかもしれないですね。
「そうですね。もしかしたらファンじゃなくなるかもしれない(笑)、というくらいの気持ちで今回はやっていて、今までの自分を捨てて、この作品をやりきりたいです。5年目を迎えたので、この作品を機に大きく変わっていきたいです!」
やなぎした・とも★
88年6月3日生まれ。神奈川県出身。06年第3回D-BOYSオーディショングランプリ受賞。同年、ミュージカル『テニスの王子様』で注目を浴びる。おもな代表作にTVドラマ『タンブリング』、映画『書の道』などがある。
舞台『熱海殺人事件』NEXT ~くわえ煙草伝兵衛捜査日誌~
紀伊國屋ホール 2月4日(金)~14日(月)
問い合わせ/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~19:00)
出演/山崎銀之丞 長谷川京子 柳下大 武田義晴