授業料の未払いから大学を除籍になり、ネットカフェ難民、ホスト、さらにはホームレスへ……。映画『東京難民』は、格差社会の中でもがく若者たちの姿を、リアルに描いた青春群像劇だ。主人公・時枝修を演じたのは中村蒼。
なかむら・あおい★
91年3月4日生まれ、福岡県出身。05年、第18回『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』でグランプリを受賞しデビュー。これま
での出演作に映画『ひゃくはち』(08年)、『潔く柔く』(13年)などがある。現在放送中のドラマ『なぞの転校生』(テレビ東京系)では、主人公・岩田
広一を演じている。ドラマ『希望の花』(NHK)が2月25日放送。同局初主演を務める。
映画『東京難民』
監督/佐々部 清
2月22日(土)~、全国公開
(オフィシャルサイト)http://tokyo-nanmin.com/
(C) 2014『東京難民』製作委員会
――完成作をご覧になっての感想をお聞かせください。
「自分が出ている作品なので客観的に見られないんですけど、社会的な問題を題材とした作品に出るのは初めてで。ずっと出てみたいと思っていたので、すごくうれしかったです。夢がかないました」
――時枝修という若者が、親からの学費や家賃の援助をなくし、どんどん歯車がおかしくなっていく様子が描かれています。脚本を最初に読んだときの感想はいかがでしたか?
「そのときは、まだ自分が演じるとは決まっていなかったんですが、読んだだけでも、すごくこの役をやってみたいという気持ちになりました。それと、最後にはちょっとした希望が自分の中に芽生えてきて、不思議な感覚に陥りました」
――順撮り(物語の内容の順に撮影を進める)ということで、気持ちの変化も物語に沿っていったと思うのですが。
「その面では演じやすかったですね。でも、撮影が13年の1月からだったので、お正月に実家に帰って休みボケしないよう、1日に何回かは台本を読むようにしていました。だんだん役に近づいていくようにしました」
――撮影中、大変だったことは何でしょうか?
「大きなきっかけから変わっていく役ではなく、徐々に気持ちが変化していく役だったので、そこを演じるのは難しかったです」
――もし中村さんが、修と同じように、住む家がなくなって、頼れる人もいないという状況になったらどうしますか?
「何かしらの仕事はすると思いますけど、修のような選択をするかといえば、しないような気がします。修は、世の中のいろんなことに無知でした。でも、無知であるからこその精神力、生命力の強さはすごいなと思います」
――修の選択を、浅はかだと思わなかった?
「いえ、すごいなと素直に思えました。それに修は、自分は大学の友達に助けてはもらえなかったのに、自分ではまわりの人を助けられる。そんな優しさも感じます」
――完成披露試写会の際、佐々部監督が中村さん起用の理由を『変な真面目さから、〝難民感〟があった』とおっしゃっていました。このコメントへのご感想は? あまりうれしくないですよね!?
「そうですね。もう、苦笑するしかないです。でも監督は、出演者やスタッフさんを見ている人。こちらも毎日、気を張っていないと見透かされてしまいます。撮影中はある種の緊張感をいつも持たせてくれたので、感謝しています」
――10代からお仕事をされていますが、今後の抱負をお聞かせください。
「見ている人にちゃんと届けられる役者になりたいと思っています。自己満足ではなく、伝える力を持てるような」
――作品のPRをお願いします。
「たくさんの人に見ていただいて、それぞれが、身近にある幸せをもっと感じてほしいです。学校に行ける、ご飯が食べられるといった当然のことに感謝して、大切にしてもらいたいです」
――中村さんご自身は、東京がお好きなんですね?
「好きです。地元の福岡からきた当初は、人がたくさんいて大変なところだと思いましたけど、今は違います。福岡と同じように、ホームグランドになりました。今回の映画にも『東京』とタイトルにはついていますが、東京には〝闇〟の部分もあります。でも、東京は単に怖いところではありません。それに修のような人たちって、いろんな場所にいるんですよね。自分近くでもあり得る話なんだと知ってほしいですね」