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終戦直後の混乱期に、こんな奇跡のような話があったのかと、驚くに違いない。映画『飛べ!ダコタ』は67年前、新潟県の佐渡で実際にあった話をもとに作られた。主人公の千代子を演じた比嘉愛未も、こんな言葉を口にする。


「このすばらしいお話が、ずっと映画にならなかったのが、不思議なくらいです」

終戦から5カ月。佐渡島に、英国軍の輸送機、ダコタが不時着した。ダコタの乗組員を、佐渡の人たちは戸惑いながらも温かく迎え入れていく。物語は、英国兵と日本人の国境を越えた交流を軸に、再びダコタが飛び立っていくまでを描いている。

この作品で映画初主演となった比嘉は、初めて脚本を手にしたとき、ある決意をしたという。

「脚本は、いわゆる標準語で書かれてあったんですが、実話がもとになっているし、佐渡弁でできないか、と思ったんです。もし、自分の出身地である沖縄を舞台にした映画を撮るとなったとき、標準語で話が進んだら、私はすごく残念だな、と感じるんですよね。それを監督にお伝えして。それで、佐渡弁でいこうということになりました。自分が言い出しっぺになったので、『がんばらなきゃ』と必死に勉強しました(笑)」

方言指導は撮影の直前まで続いた。また、87歳の今も佐渡に暮らす、千代子のモデルとなった千世子さんとの交流も、役作りの参考になった。

「撮影現場に来ていただいたり、ご自宅にうかがったり。初めてお会いしたとき、柔らかい気品の中にある、芯の強さを感じました。この方の役をやらせていただけると思って、いっそう役への愛情が深まりましたね」

千世子さんご本人に、こんなことも聞いてみたそうだ。

「今でこそ、私たちはいろんな外国の方と接することが多いので慣れていますけど、戦後すぐという時代背景も含めて、外国人のお世話をすることは怖くなかったのか、聞きました。そうしたら『ぜんぜん』と。むしろ、その状況を楽しんでいたような印象を受けました。好奇心と正義感が強い方なんですよね」

ロケはオール佐渡。氷点下5度の寒さの中、行われた撮影だが、物語はとても温かい。

「一見、堅苦しく重い話と思われがちですが、すばらしい人間ドラマになっています」

エンドロールには、とっておきの演出がされている。最後までしっかりと楽しんでほしい名作だ。

 

 

ひが・まなみ

’86年6月14日生まれ、沖縄県出身。ファッションモデルを経て、’05年、映画『ニライカナイからの手紙』で女優デビュー。おもな出演作に、ドラマ『どんど晴れ』、『天地人』(ともにNHHK)、『DOCTORS2〜最強の名医〜』(テレビ朝日系)などがある。’14年には、初舞台『真田十勇士』への出演が控えている。


映画『飛べ!ダコタ』

監督/油谷誠至 10月5日(土)〜、シネマスクエアとうきゅう、有楽町スバル座ほか、全国ロードショーⒸ「飛べ!ダコタ」製作委員会



 

 

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