「地方公演も多く、スケジュールが大変だとマネージャーにいわれましたが、それでもとにかく、出演したかった!」
柴田理恵が、これほどまでに出演を熱望した舞台『晩餐』が、幕を開ける。作・演出は、映画化された『くちづけ』をはじめ、人の心の奥底に響く作品で人気の、宅間孝行。’12年、主宰する劇団「東京セレソンデラックス」を解散した宅間が、ファンの熱烈ラブコールに応えて、新たに立ち上げたプロジェクト「TAKUMA
FESTIVAL JAPAN」の第1弾だ。
「宅間さんの作品に出演するのは2度目です。舞台中に観客が撮影なんて普通はダメなのに、わざわざ『撮影タイム』を作ったりして。お客さんといっしょに、とことん舞台を盛り上げようという雰囲気が最高でした!
今回、共演する中村梅雀さんも市川由衣さんも、宅間作品を長年、観客として楽しんできたそうです。これはもう、楽しい作品になることは間違いなし」
物語は、幼いころに母と死に別れた作家(梅雀)とその妻(柴田)が、天才博士(市川)の発明したマシンで60年前にタイムスリップし、若き日の父(宅間)と母(田畑智子)の姿を見つめるというもの。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の大人版といったイメージだが、吉祥寺のシェアハウスで暮らす父母の素顔が明らかになるにつれ、作家夫婦は、意外な事実も知ることになる。
「誰でも、若いころのお父さんやお母さんに会ってみたい気持ちはあると思うんです。うちの両親を見ていても、口げんかばっかりして『なんでこんな人と結婚したの?』と思いますもん(笑)。それに嫁としては、会ったことのないお姑(しゅうとめ)さんがどんな人だったか、興味がある。でもこのお芝居では、私は、過去の出来事にロマンチックな夢を抱く夫を『タイムスリップする必要があるの?
知らないほうがいいんじゃないの?』と引き留める役。どこかで悪い予感がしてるんです」
演じるキャラクターは「怖いおばちゃん」だという。
「宅間さんの中では『怖いおばちゃんの典型といえば、柴田理恵』と決まっているらしくて(笑)。でも怖い顔をするのは、夫が好きで心配だからなんです。家族愛、夫婦愛、この作品には、どのお客さんでも共感できる、当てはまるところがあると思います。シェアハウスの変な同居人たちの騒動に笑いながら、親の恩や思いに触れてください」
公演は全国9カ所で行われ、故郷・富山にも訪れる。
「富山には行きつけの飲み屋さんもあるし、忙しいんですよ(笑)。でもたまに帰ると、改めて『私はたくさんの人と出会って、支えてもらってるんだなあ』と実感します。久本(雅美)に会ったことも、WAHAHA本舗を続けていることもみんなそう」
最近の〝出会い〟は、北海道羅臼町(らうすちょう)の昆布の味に感激し、地元から請われて「羅臼昆布大使」に任命されたこと。
「昆布の消費量日本一の富山育ちで、昔から大好き。一度、生の昆布を収穫してみたかったんです。そこで、旅番組でどこに行きたいか聞かれ、『羅臼!』と即答しました。昆布って、肉、魚、野菜、どんな素材の味も邪魔せずに、しっかりと引き立てるだしが出るんです。もちろん、だしをとるだけじゃなく、そのあともいろいろな料理に使えて無駄がありません。私も、昆布のような女優になりたい。そう心に決めているんです」
しばた・りえ
’59年1月14日生まれ、富山県出身。劇団東京ヴォードヴィルショーを経て、’84年に久本雅美らと劇団WAHAHA本舗を結成。舞台活動を続ける傍ら、テレビドラマやバラエティ番組でも活躍している。
舞台TAKUMA FESTIVAL JAPAN 『晩餐』
東京公演/10月3日(木)~27日(日)、サンシャイン劇場にて。ほか、全国計9カ所で公演予定。詳細は公式サイト(http://takufes.jp/bansan/)まで