「若いメンバーでやらせていただきますから、技術ではまだ先輩方に及ばないところがあると思うのですが……。気迫とエネルギーと元気。この年にしか出せない、若さゆえのパワーを感じていただきたいですね」
そう語るのは、歌舞伎俳優の尾上松也さん(30)。浅草の正月の風物詩となっている『新春浅草歌舞伎』(浅草公会堂・1月2〜26日)。’15年の公演に引き続き’16年公演も、次世代の歌舞伎界を担う若手たちの先頭に立って公演を率いる立場を任されているとあって、気合は十分だ。最近でドラマやバラエティなどテレビ出演も多数、多方面で活躍されている松也さん。そんな彼に、どっぷり歌舞伎について話を聞きました。
−−歌舞伎のなかで女性がキュンとなりそうな役を教えてください。
「今回の『新春浅草歌舞伎』で僕が演じる与三郎というお役(第1部/『与話情浮名横櫛』)は、女性からしたらキュンキュンだと思いますよ。ツンデレですから。やんちゃで柄の悪い人みたいな感じですごくツンツンしてるのに、一途で恋人に『二度と離さないよ』なんて言ってしまうくらいですから。そして少し年下キャラというか、甘えん坊チックなところも垣間見えたりするので、母性本能をくすぐるという意味では、非常にポイントが高いお役だと思います」
−−松也さんは立役(男役)を演じることが多いですが、女方の俳優さんに舞台上でときめくことは?
「そうだな〜。いや〜むずかしいですねぇ。あっ!おかる(『仮名手本忠臣蔵』に出てくる女方役名)の、夫を支える心意気にはときめきます!非常に日本人らしく大和撫子で、武士の妻っていう誇りを持っているところなんか非常にかっこいいですし、それでいて愛情も感じる。大和撫子と言われる方って旦那についていってるようで支えてる部分が大きいところがいいなと思いますね。現代社会では難しいですね」
−−舞台上で困ったことは?
「いろいろあります。台詞がとんだり小道具を忘れたり。舞台稽古のときだったので大丈夫でしたが、お金を一枚一枚出して『これをおまえらにやるぞ』っていう悪役を演じたとき、懐ろを探したらお金が入ってない。『お金を忘れた!』って言いました。みんな笑ってましたね(笑)。本番じゃなくてよかったです」
−−歌舞伎俳優のなかでも、おしゃべり上手でとっても面白い松也さん。松也さんが面白いと思う歌舞伎俳優はどなたですか?
「むずかしいなぁ(笑)。いろいろな方がいらっしゃいますが、トップ3でいくと、3位が坂東巳之助さん、2位が市川猿弥さん、1位が市川九團次さんですね!猿弥さんは楽屋にいらっしゃるときが面白い。九團次さんはとても天然な方で、一緒にいてとても楽しいです」
−−最後に来年の目標を。
「まずは『新春浅草歌舞伎』を盛況で終わらせたいというのがひとつ。そして、そのほかのお仕事でもしっかりと成果を出して、皆さんから必要とされるようになりたいです」