image

 

「私が俳句を始めたのは今から10年以上になります。長男が1歳になるころ、子育てに忙殺されていて、『ああ、こうやって季節感を失ったまま年をとっていくんだな』と、ふと侘しく思ったことがありました。年を重ねていっても続けられる趣味を持とうと、いろいろ探していたら、俳句に出合ったのです。『俳句なら季語があるから季節を感じることができる!』という単純な理由なんですけどね」

 

そう語るのは、’04年に衆議院議員・後藤田正純(47)と結婚し、’05年には長男を出産した水野真紀(46)。女優、妻、そして母として多忙な日々を送る彼女だが、実はもうひとつ「俳人」という顔もあった。昨年12月には東京新聞の俳句欄の、選者を務め話題になったばかり。

 

「投稿された作品には、顕微鏡でのぞいたようなミクロの世界を表現したものもあれば、宇宙を感じさせるような広大な世界を表現したものもありました。また生活を詠んだものにも、素晴らしい作品が多く、たくさんの句に接することができたのは、素晴らしい体験でした。最初は日常生活に彩りを与える目的で始めた俳句でしたが、いまでは俳句のおかげで、私のなかでいろいろな変化が起こっているな、と感じることが増えてきました。俳句を続けていると、無意識でも物の見方や感じ方が敏感になるのかもしれません」

 

彼女の俳句のなかには、主婦としての姿をのぞかせる作品も多い。

 

「《寒鯛を下ろす眼鏡に鱗飛ぶ》これは昨年11月に詠んだ句です。まさに句会に行く直前に夕食の用意をしていて、鯛の鱗を包丁でとっていたら、眼鏡に鱗が飛んできたという情景そのままの句です。《急ぎたる煮付色濃し一茶の忌》は先の句の続編で、季語は一茶忌(※俳人・小林一茶の命日)です。寒鯛は煮付けにしましたが、出かける直前だったもので、急いで料理したら、煮付けの味が濃くなってしまったんですよ(笑)」

 

俳句には、育児との共通点もあると彼女は言う。

 

「子どもには、良書と呼ばれている児童書や国語の教科書を読むことが推奨されます。それはいい文章の『形』を覚えるためなんですと、ある先生がおっしゃっていらして、『あっ、俳句と同じだ』と思いました。子どもは、まっさらな状態から文章を感覚で覚えていくでしょう。リズム感や『てにをは』や、きれいな表現を身に付けるために、本を繰り返し音読するのよ、と息子にも言っていました。息子にはそんなことを教えていても、私もまだまだ修行中です」

 

俳句が浮かんだときは、すぐノートにメモをしているそう。

 

「ノートにメモをして、そこから言葉を換えたり、語順を入れ替えたりして推敲します。どこまでいっても満足したという感覚には到達できません。おそらく一生そうだと思います。俳句は老後のため、ボケ防止のため、と思って気長に取り組むつもりです」

関連カテゴリー:
関連タグ: