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「両親の介護について取材依頼をいただくと、お答えできる場かどうか、かなり慎重に考えます。メディアで取り上げる介護って、どうしても必要以上に過酷や悲惨といったイメージづけをされがちなので。今回は『女性自身』さんの熱意に根負けしました(笑)」

 

そう話すのは、アナウンサーの渡辺真理さん(50)。’90年、TBSに入社『モーニングEye』『筑紫哲也NEWS23』と、同局の看板番組のキャスターを歴任した後、フリーに転身。さまざまな人気番組で活躍してきた。一方、私生活では’98年、父親(’14年に他界)、続いて母親を自宅で介護する生活を、現在まで続けている。

 

「もちろん、大変じゃないなんて言うつもりはないんです。実際に介護されるご家族の方が消耗し、困窮される場合もあるわけですから。ただ、放送する側にいる身としては、過酷さだけをクローズアップするのはある意味キャッチーかもしれないけれど、抵抗があるのも事実で。できれば、まず介護される側の気持ちをくみたいですよね。がんばって生きてきた人生の終盤、どなたも好んで介護生活に入られるわけでないから、興味本位でその生活を晒すことになったり、介護=過酷のひと言で片づけるのは個人的に嫌です。一方で、親世代って昭和の律義さと高度経済成長を築いたガッツを併せ持つ人たち。いつもどこかで社会の役に立ちたいと願っていて、子どもくらいの年齢のヘルパーさんに『ありがとう。ごめんなさいね、大丈夫?』と毎日聞いたりします。だから、私たち世代としてはそんな介護される側の願いをくみつつ、実情を伝えてこれからに生かしていかないと。実際に、介護の現場で働く方たちには相当なシワ寄せがいっているのも事実です。介護保険スタートから17年たちますが、制度として成熟していない現状をスピード感をもって改善していく必要性は感じています」

 

渡辺さんは現在、実家を増改築した横浜市内の二世帯住宅で暮らしている。2階が彼女と、’08年に結婚したフジテレビ勤務の夫の住まい。そして、もとの実家である1階で、母親が療養生活を送っている。

 

「一日のスケジュールですか?特筆していただくようなことは何もなくて、申し訳ないのですけど(笑)。今はデイリーの番組に参加していないので日によってまちまちですが、平日は朝6時過ぎに起きて母の様子を見て、主人を送っていって、犬や猫たちの世話をして。そのあと、自分の仕事に向かいます。要介護5の母には泊まり込みのヘルパーさんがついていてくれるので補い合いながら家事をします。職業柄、仕事中に親に何かあったとしても立ち会えない覚悟はしていますし、親自身「何かあっても仕事をやり遂げなさい」と怒るタイプではありますが(笑)。できるだけこまめに近くにいたいな、と。アナウンサーになってからレギュラーの番組をずっと受け持てていることは本当に恵まれていて幸運だと思いながら、今は泊りがけなど家族との時間を妨げる仕事は控えています。来た球は全部、打つ!って仕事の姿勢も好きで家計上も楽ですが、精神的に落ち着いて臨めないと仕事に対しても失礼になりますし。遅く結婚した主人が、今はとにかく私の親と一緒にいよう!と同居を決断してくれたことには何よりも感謝していて、助かっています」

 

母親は現在、要介護5。歩行もままならない状態だが、「母を見てると、人の体ってすごいと改めて実感します」と渡辺さんは語る。

 

「繊細だけど強くもあって、絶妙のバランスのうえに成り立っているんだ、と。免疫力が低下すると風邪など炎症が起きやすくなって、点滴で水分を補給するとむくみが出てしまうなど、心配は尽きません。でも、体が利かなくなって、もどかしくてつらいのは母自身。父のこと(介護)でも誰よりがんばってきた母だから、今の生活を少しでも楽しく感じてもらえるよう、一回でも多く笑ってもらえるよう、家族としては力の見せどころです(笑)」

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