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「私、失敗しないので」。おなじみのせりふとともに、孤高の天才外科医が帰ってきた。“白い巨塔”に渦巻く権威と闘い続ける大門未知子は、どのようにして生まれたのだろうかーー。

 

「今シリーズは経営難に陥った『東帝大学病院』にリストラやコストカットの波が押し寄せるなか、『医療と病院は誰のためにあるのか』をテーマに、大門未知子の孤高な闘いを描いています」

 

そう語るのは、テレビ朝日でエグゼクティブプロデューサーを務める内山聖子さん(54)。「私、失敗しないので」をきめぜりふに、困難な手術や治療を次々と成し遂げる外科医・大門未知子の活躍を描く医療ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(木曜21時)の第6シリーズが、10月17日からスタートした。

 

内山さんが手がけ、’12年にスタートした本作は、第1シリーズで平均視聴率19.1%を記録。さらに、’13〜’17年に放送された第2シリーズ以降の作品は、いずれも平均視聴率20%超えを獲得。橋田賞、向田邦子賞などドラマの各賞も総ナメにし、国民的人気シリーズへと成長。大門未知子は、いまや米倉涼子(44)の“代名詞”ともいえるキャラクターに。

 

「いわゆる“よき医者”のイメージどおり、見に見える努力や勉強をして患者に寄り添う姿は描きたくなかった。米倉さんが持つ“野生の魅力”を生かした、医学の修業をどこでしたかもわからない医師がいい。大門未知子が特定の病院に所属しない、フリーランスの医師であるのもそこからきています」

 

そして誕生したのが、群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、たたき上げのスキルだけを武器に突き進む外科医・大門未知子だった。

 

その設定には、内山さんが、会社員として見聞し、経験したことが多く生かされているーー。

 

「男女雇用機会均等法の施行後の’88年に入社し、はじめは秘書室に配属されましたが、“いつかドラマを作るときのために”と組織内の人間観察を心がけていました」

 

大門未知子のスタンスにこめられているのは、内山さんが若手時代に感じた“違和感”の数々。

 

「社長や役員がエレベーターに乗ってきたら、ほかの社員は先に乗っていても降りて譲る。そんな暗黙のルールを秘書時代に目の当たりにして、驚きました。それなら未知子は、自分が乗るエレベーターにどんなに偉い病院関係者が乗ってきても、微動だにしないようにしよう、と(笑)」

 

制作部に異動し、紅一点の見習いアシスタントプロデューサー時代を経て、プロデューサー職に就いた内山さん。しかし、初めて手掛けたドラマは打ち切りとなるなど、制作部での仕事は“失敗”の連続だった。

 

「テレビの世界は、突出した個性を持つ人たちが多く、そういった組織のなかで“ダメなものはダメ”とキッパリと『NO』をつきつけることができず、知らず知らずのうちにストレスをためこんで、円形脱毛症になったり、顔面まひになったりすることもありました。私も含め、組織で働く人は、“忖度”や“理不尽”といったモヤモヤに悩む人が多い。そんなモヤモヤをはね返すようなヒロインがいたら……という思いから、未知子は生まれているんです」

 

やりたくない仕事についても“いたしません”ときっぱり断る未知子。そんな彼女のスタンスを際立たせるのが、“権力の象徴”ともいえる院長・蛭間(西田敏行)、そして彼の命令に「御意」と徹底的に服従する海老名(遠藤憲一)や加地(勝村政信)たち。

 

「40代になり、私が中間管理職になったころ、『うちの会社には、上司にこびへつらう“御意三兄弟”がいるんだ』という同期の一言が忘れられなくて。それで、海老名や加地は“御意軍団”として描くことにしたんです(笑)」

 

前シリーズの最終話、未知子は後腹膜肉腫を患っていることが発覚し、余命3カ月と診断され、視聴者に大きな衝撃を与えた。

 

「大病にかかり、命をほかの医師に委ねて克服。治療される身になった未知子は、その経験から患者の気持ちを知ります。『医師として患者として、何が怖かったか……』と、未知子の本音に迫るシーンが今作の後半には出てきますよ」

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