2018年7月に事実婚を発表し、2019年9月に長男が誕生した、はあちゅうとしみけん。活躍する業界もファン層も違う異色夫婦が、「これ、どうする?」「あれ、どう思ってる?」と赤裸々に語り合う本誌連載「家族会議 議事録」の第16回。はあちゅうが直面した、家庭を守る女性の苦悩とは……。
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はあちゅう「10月に私がネットに書いた、『3歳児以下の子供を持つ父親の夜の外出を、法律で禁止してほしい』って文章が、思いのほかバズってしまって」
しみけん「僕が飲み会に行った日の!」
はあちゅう「息子がぜんぜん泣きやまなくて、抱っこしてないと泣く。私は疲れが限界で、誰かにパスしたい。そうしたら夜中の12時に、けんちゃんから『2軒目に来てしまった……』ってLINEが!」
しみけん「『世の中の産後の妻が、旦那を殺したい瞬間第1位のあれ』って書いてあったね……。いやぁ……強引に連れてかれてしまって……」
はあちゅう「私もかつてそういう場所にいたから、『あと1杯だけ』って誘う人の気持ちも、断われない気持ちもわかる。ただ、自分はたとえ仕事でも、外になかなか行けない状況で、家でずっと待ってるのがつらかった。小さい子供が家にいて、旦那が外にいるってことは、妻がひとりでずっと、子供を見てる必要があるわけじゃない。そういう想像力がない人が多すぎる」
しみけん「『子供がいても、子育てに携わったことのない人たちが、僕のまわりには多い』ってのがわかってきたよ」
はあちゅう「私みたいに、『私は働きたいのを我慢して、家で子供を見てる』って気持ちがある人は、旦那だけ自由に出かけられることに、不公平感を強く感じてしまうんじゃないかな。けんちゃんは、仕事の予定もプライベートの予定も、誰にも確認せずにバンバン入れられるでしょ? 私はできないんだよ。歯医者ひとつ行くにしても、母に『何時から何時まで預かってほしいけど、家に来てもらえない? 都合はどう?』って聞かなきゃいけないし。しかもその会って、『“しみけんパパ” 誕生おめでとう会』だったんでしょ?」
しみけん「あ、怒るのそこだよね……」
はあちゅう「けんちゃん、デザートプレートの写真送ってきたじゃん。『パパおめでとう』って書いてあるやつ。それ見たときに『これを食べる権利があるのは私じゃないか』って(笑)」
しみけん「僕、いつもそういう場では言ってるよ。『僕はべつになにもしてません。ただ、射精しただけです』って」
はあちゅう「子作りを、そう言わないの!」
しみけん「古い世代の男と頭のいい男に、男尊女卑がものすごく残ってることも一因」
はあちゅう「そう、頭のいい人。進んでいるように見える業界でも、トップの思想の根っこは、男尊女卑だったりする。『女は頭が足りないから、家で家事と子育てしとけばいいんだよ、俺みたいに稼げないだろ』って態度」
しみけん「頭のいい人は、ひとりでも生きていけるからね。でも、そうじゃない人は、徒党を組まないと生きていけない。ヤンキーもそう。だから義理や人情を重んじるし、共感力が高い。頭のいい人は徒党を組まなくていいから、共感力が低い。だから奥さんのことも、どこか見下してる。結婚の理由も、『たんに社会的ステータスを獲得したいから』だったり」
はあちゅう「子育てするようになってから、私の中で評価が下がった男の人がけっこういるんだよ。『この人、奥さんから見たら、すごくイヤな旦那さんなんだろうな』『経営者としては優秀かもしれないけど、人としては尊敬できないな』とかって。20代のころの私は、そういう人たちに夜呼び出されて遅くまで飲んだこともあるけど、奥さんたちはその間、自分ひとりで子育てしてたわけでしょ。だから今、そういう人を目のあたりにすると思うよ。『この人の光輝くキャリアの裏には、陰でサポートしてる人がいるんだろうな。偉いのは、その人のほうだな』って」
しみけん「僕のまわりで子育てを一切やってない人って、ホント賢くて高収入ばかり」
はあちゅう「ただ、奥さんが専業主婦の場合、男性が男尊女卑になる気持ちが、わからないでもないんだ」
しみけん「どういうこと?」
はあちゅう「私、母親の生活費を、家賃も含めて全部出しているんだけど、妊娠中は仕事ができないから、収入がめちゃくちゃ下がったのね。そのときに母が、けっこうお金のかかることを『やりたい』って言って、『え、それ誰のお金? その額、自分で稼げるの?』って、イラッとしちゃったことがあった。妊娠中だから、過敏に反応しちゃったってのもあるけど。『私、自分が嫌いな昭和の男になってるじゃん』って、自分にドン引きした」
しみけん「それは、お母さんにちゃんと言ったほうがいいね」
はあちゅう「要はね、『自分が稼ぎ続けていないと、この人の生活を守れないんだ』っていうプレッシャーが、常にある状態なの」
しみけん「プライドもあるんじゃないの?」
はあちゅう「そこもすごく微妙で、高いものをねだられれば『自分で稼げない金額を、軽々しく使わないで』という気持ちが湧くのに、遠慮されると『稼ぐ能力がない』と思われてるようで反発心が……。あと、『お母さんも働く』とかって言われても、『お母さんが稼げる額と、私が稼げる額は違う』って気持ちが正直ある。それって専業主婦妻に対する、男尊女卑の思考と一緒だよね」
しみけん「一瞬でもそれを体験できてよかったんじゃないかな」
はあちゅう「よかった、のかなあ?」
しみけん「その男尊女卑的な考え方を、女性であるはあちゅうが、『自分の内側から湧き上がるイヤな感情』として体験して、理解した。だから今後そういう人に出会っても、ただ切り捨てるんじゃなく、理解しようと努められる。すごくいい体験をしたと思うよ」
【はあちゅう】
1986年、神奈川県生まれ 慶應大学在学中より、ブロガー活動を開始。会社員経験を経て、2014年、フリーに。ブログ「旦那観察日記」で、夫婦生活を鋭意発信中。
【しみけん】
1979年、千葉県生まれ 1998年にAVデビューし、出演本数は約1万本の現役AV男優。最新刊『しみけん式「超」SEXメソッド』(笠倉出版社)が発売中。
取材&構成・稲田豊史
(週刊FLASH 2019年12月17日号)