先日続編制作が発表されたNHKプレミアムドラマ「おしい刑事」(風間俊介主演、2019年放送)。原作者で作家の藤崎翔さんは、元お笑い芸人だ。
続編「やっぱりおしい刑事」も前作同様期待が集まり、来年3月のオンエアを心待ちにする声が高まっている。
原作者の藤崎翔さんは、このコロナ禍で資金繰りが悪化していたお笑い専用劇場「新宿バティオス」にクラウドファンディングで手を差し伸べた。
同劇場がクラウドファンディングで募集したなかでも一番値段の高い「命名権」を約290万円で購入したのだ。
「コロナ禍で苦しんでいる劇場があると聞いて、いても立ってもいられなくなりまして。僕は高校卒業から6年間、お笑い芸人として活動し、お笑いに育ててもらった身です。今、作家の端くれとして活動できているのは、間違いなく芸人時代の経験のたまものです。この機会に、お笑いの世界に恩返しをしなければと思って命名権を購入させていただきました」
お笑い劇場には名前を付け、原作はドラマ化され、さぞ豊かな印税生活を送っているのかと思いきや、現状はそうではないらしい。
付けた劇場名は「新宿バティオスwith 年収並みの命名権を買っちゃったから小説が売れないと困る藤崎翔」
自らの年収を暴露するほどの決意で、お笑いに恩返しをしたかったのだ。
そんな藤崎さんがこの度上梓する最新短編集『比例区は「悪魔」と書くのだ、人間ども』は、今までの著作のなかで一番“お笑い”要素が強い作品となっているという。
「今までの僕のキャリアの中でも、最もコメディ色の強い作品となっています。僕にとって、一番好きなことが書けた、とても手応えのある作品です。
自称悪魔の「悪魔党」が国政選挙に立候補して波乱を巻き起こす表題作に、イソップ童話の神様が現代日本の人間たちに苦戦する『日本今ばなし 金の斧 銀の斧』、アンチエイジングのカリスマモデルが思わぬ災難に巻き込まれパニックに陥る『一気にドーン』、心霊写真に長年写ってきた幽霊が、近年画像加工技術が向上したせいで人間たちに怖がられなくなったため新たな方法を模索する『心霊昨今』など、笑いの中に社会派のテーマも込めています。
ですが、コロナの影響からか前作から初版部数も大幅に落ちてしまい、正直厳しいですね。命名権の値段を下回る年収にならないよう、渾身の“笑い”の力をこの短編集に込めました。お笑いに救われた僕が、お笑いに少し恩返しをして、さらにお笑いに救ってもらえる……そんな好循環を願っています」
全6話の短編と、あいだに差し挟まれるショートショート6編はいずれも元お笑い芸人らしい、ひねりとオチのある快作揃い。
年末年始をステイホームで過ごす私たちの疲れた心も、“笑い”が救ってくれそうだ。
【INFORMATION】
NHKプレミアムドラマ「やっぱりおしい刑事」
BSプレミアム 2021年3月7日(日)スタート〈連続8回〉
毎週夜22時~22時49分
※BS4Kでも同時放送
著者:藤崎翔
発売:12月23日(水)
価格:1,550円+税
出版:光文社
https://www.amazon.co.jp/dp/4334913784/