育った場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代にはやったドラマや歌の話。各界で活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。
「愛知県の瀬戸市にある田舎の高校に通っていたんですが、同じクラスに、なぜか名古屋から通っている女子が1人いて。もう、髪形やスカート丈も都会的に映って、まぶしかったんです。放課後に集まる場所ってマック(マクドナルド)しか知らなかったのに、そのコに『ジョン万次郎(バブル時代に出店が相次いだ洋風居酒屋)は?』って言われたときは“ジョン万次郎……? なんだ、それは!?”って、激しいカルチャーショックを受けました。じつは『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を買ったのも、そのオシャレなコのマネをしただけなんです」
エッセイスト、女優、お笑いタレントなど、マルチな活躍をしている青木さやかさん(47)が“80年代の思い出の1冊”に挙げたのは、’82年に出版された、林真理子さんのデビュー作。
このなかで《できるだけ正直にいろんなことを書こうと思ったのだが、書きすすむうちにあまりのエゲツなさにわれながら悲しくなってしまったことが何度もある》とつづる著者の、モテる女性への妬みやそねみをあけすけにしながら、女性を磨き、恋愛、仕事にも奮闘する姿が描かれたエッセイ集だ。
『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を手にしたのは、アグネス・チャンが仕事場に子どもを連れてきたことを、林真理子が批判して巻き起こった『アグネス論争』の真っただ中。
「そんな難しいことはわからず、『ルンルンを買っておうちに帰ろう』で心を奪われたのは、都会的ワード。コム・デ・ギャルソンとか、イッセイ ミヤケとか、丸の内に六本木、サンジェルマンのパンとか」
アーバンな世界を見たくて、高3のときには東京旅行もしたとか。
「東京の美容院に行って、見たこともないような髪形をしている男の人に、思いきって『いちばんはやっている髪形にしてください』って頼むと、KARIAGEに。“斬新で、オシャレだ!”って大満足だったんですが、それはあくまで東京の雰囲気があってこそ。瀬戸市に帰って田舎の制服を着ると、“普通のかりあげ”になっちゃう。男子から、からかわれて、30センチ定規を当てられ、ジョリジョリされました」
高校時代に妄想、実体験含め、さまざまな東京を感じさせてくれた『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を、いま改めて読み返してみると、深い部分での影響を感じるという。
「あとがきに《(略)拍手が全くこないストリッパーはかなりミジメなような気がする。だからこの私の裸体を見て、顔をそむける人もいるかもしれないが、なるべくたくさんの人がピーピー口笛を吹いて喜んでくれるといいな、と思うのである》とあるんですが、私はとても勇気をもらいました。林先生はネガティブな感情もポジティブに伝える。私の芸も、聞く人が嫌な思いになりかねない感情をさらけ出すことが多いですが、下品にならないよう、お笑いに浄化するように心がけています。『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を意識してネタを作るようなことはなかったけど、やっぱり読んだ本は、自分の血や肉になっているって感じます」
そんな青木さんは、現在、エッセイ小説を執筆中だという。
「空き時間を使って、スマホで書いて、ときには1回で1万字を超えることも。4月くらいに出せればいいなって思うんですが……。大好きな『ルンルンを買っておうちに帰ろう』のように、皆さんに愛される本になるよう、精いっぱい書きます!」
「女性自身」2021年2月16日号 掲載