■安定を捨てることへの不安も後悔もない
ちとせはインタビュー中、背筋を伸ばしハキハキと答える。仕事そのものを楽しんでいたこともあり、ゆくゆくはキャリアウーマンになっていたかもしれない。しかし、彼女には諦め切れない“夢”があった。それは芸能界で活躍するということ――。
「仕事の合間に、福岡に出向いてはポートレートを撮ってもらっていました。そこで出会った女の子たちが、スカウトされて東京に行くっていう流れがあったんです。私も『いつか上京できたらいいな』と思っていました。実は会社員をしたのは、『上京資金を貯めたい』という気持ちもあったからなんです」
すると、あるとき現在の所属事務所からSNSを通してスカウトが。そして、1st DVDの撮影日も決定。着実に“夢の舞台”へと向かい始めた彼女は、ついに上京を決意する。
「佐賀から芸能界を目指す子は珍しいので、周囲から絶対反対されるだろうなと思いました。なので、“上京するしかない状態”を作れるまで誰にも内緒で準備を進めていました。鉄工所では、社長と現場に行く車のなかで『私、芸能活動に興味あるんですよね』と匂わせたり(笑)。だからなのか『上京します』と伝えたとき、社長は『若いうちはやりたいことをやったほうがいいよ!』と背中を押してくれました」
しかし、会社員とは違い芸能界は不安定な世界だ。安定を捨てて転職することに不安はなかったのだろうか?
「それよりもワクワクする気持ちしかなくて! それにもし芸能のお仕事が苦しくなったとしても、佐賀と違って東京なら仕事はそこら中にあると思っていました(笑)。後悔も全然ありませんよ。
母は当初、かなり心配していました。目に見える形だと少しでも安心してもらえるかな、と思うので『今月の給料はこうだよ』と伝えたり、テレビや雑誌の情報を教えたりしています」