西川美和監督が語る日本映画界の問題点「高いチケット代が作り手に1円も還元されない」
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■少ない監督料。しかし、印税にも期待できない

 

西川監督に映画監督の収入について聞くと、「日本の映画監督の監督料に最低賃金の規定はなく、作品ごとに発注元や製作委員会が定めた製作費に準じて、プロデューサーから提示されます」と返答が。しかし、国内外で高く評価される監督でも「商業性が低い」とみなされた場合は、予算を低く見積もられるというのだ。

 

「賃上げ交渉をすればいいと思われるかもしれませんが、何十億円の興行収入を上げて出資元の黒字が確実視できるような商業性の強い映画でない限り、全体予算の増額を監督からお願いするのは心理的にも難しいという状況があります。

 

自分の監督料を上げてもらうことによってスタッフの賃金が下げられたり、現場でできることが狭められていくのは避けたいので、提示額に従ってしまうのが通例です。キャリアの少ない若い監督ならば、『多額のお金を投じて撮らせてもらっている』という心理状態に置かれますし、なおさらのことだと思います」

 

さらに西川監督は、こう明かす。

 

「劇場公開される映画の著作権は出資元にあり、監督や脚本家には帰属しません。劇場で映画を観てくれたお客さんが1,900円という世界的に見ても高額なチケット代を支払ってくださっても、監督や脚本家、広告塔になった主演俳優など、作り手たちには1円も還元されないのが一般的です。

 

また監督や脚本家、俳優やスタッフらが、製作費回収完了後の成功報酬契約を結んでもらっているケースは必ずしも多くはありません。さらに日本のチケット収入は、劇場や配給会社への分配比率が高く、作品の製作費を回収するにはよほどの商業的成功を収めなければ見込めないのが実情です」

 

作品がDVD化などされると、二次使用されたことによって監督たちには印税が入る。ところが西川監督は「契約上締結してもらっていないケースが少なくないとも聞きます。また時代の推移とともにビデオ、DVDソフトの売り上げが落ち込んでからは印税収入も低くなり、動画配信サービスの台頭により、レンタルビデオ産業も急速に衰退し、この10年〜15年くらいで監督、脚本家、原作者に支払われる印税額は全般的に下がっているのではないでしょうか」と綴る。そして、こう続ける。

 

「公開終了後のDVD売上の印税をあてにして、“低い監督料でも何とか製作時期は凌ぐ”というのがかつての実感でした。しかし“入ってきていたはずのものが入ってこなくなった”という感覚はあります。

 

サブスクリプションの配信により多くの方が過去作を観てくれる機会が増えたものの、配信に対しての作品販売額に対する監督や脚本家の印税率のパーセンテージは十分とは言えないと思います」

 

【中編】西川美和監督明かす監督専業で生活できないことの苦しみ「映画の価値が低いと思わされる」へ続く

出典元:

WEB女性自身

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