■死んでいるような人間の顔にゾンビパウダーを
続いて越智さんが挙げてくれたのは、カリブ海に浮かぶ島『ハイチのゾンビ伝説』。ホラー映画などで知られるゾンビの、リアルな光景を垣間見たという。
「ハイチには世界遺産となっている『シタデル』と呼ばれる巨大要塞を撮影しに行きました。フランスから独立した世界で初めての黒人の国ですが、現在では最貧国として知られており行った時も水は汚いし、野良犬とかヤギが平気で町中に歩いているほどでした。このシタデルという城はアンリ・クリストフという国王が自分の要塞城を造ったもので、200年以上経った今でもそのまま残っています。ここも奴隷の幽霊が出るなんて言われてましたが、リアルな恐怖を体験したのはこの後でした。
取材中に雨が降ってきたので城のふもとの村の宿に泊まったのですが、夜中に休んでいると太鼓のような音が聞こえてきたのです。どうやら外の広場からなので慌てて向かってみると、そこには4~50人ほどの地元民が集まって、何やら怪しげな儀式を行っている……。現地のコーディネーターに聞いてみると、ブードゥー教の儀式だというじゃないですか!
ブードゥー教といえばホラー映画などでもおなじみで、黒魔術なんて言う人もいます。ゾンビ映画で知られる“ゾンビ伝説”の素ですね。実際にはゾンビを見たわけではありませんが、死んでいるように見えた人間の顔にゾンビパウダーと呼ばれる毒を塗っているんです。撮影はほとんどできなかったのですが、まるでホラー映画のようなシーンを実際に目の当たりにすると本当に怖かったですね」
越智さんが見聞きした世界の不思議な体験を漫画化した書籍『映像ディレクター越智は見た(1)世界怪奇録』(朝日新聞出版)が1月20日に発売された。世界の不思議は尽きない。