(撮影:加治屋誠) 画像を見る

‘22年に内閣府が発表した「少子化社会対策白書」によると、50歳時点で一度も結婚をしたことがない女性の割合=生涯未婚率は17.8%。もはや「結婚適齢期は25歳」という認識は、とうの昔に時代錯誤に。多様な生き方が尊重される今、女優・有森也実さん(55)に「おひとりさま」の実情について聞きました。

 

「一人でいることって、つらいとかさみしいと思われるものなんですかね」と、疑問を投げかける有森さん。結婚を強く意識した時期もあったというが、現在未婚。これまでにさみしさや不安を感じることがなかったか尋ねると「そんなこと言ったらきりがないじゃない」と笑う。

 

’86年に映画『星空のむこうの国』で女優デビュー。清純派女優として注目されるなか、’91年に放送されたドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)でその印象はより強いものに。

 

当の彼女自身は、年相応に恋愛をしてきたと話す。では、結婚についてはどう考えていたのだろう。

 

「『自分の居場所みたいなものを作りたい』と、家族を持つことへの願望もあり、20代には自分からプロポーズしたこともありました。家庭をいちばんにしたいという思いから仕事を辞める覚悟もあったのですが、相手の方からしたら負担に感じたのかもしれません。結局、お別れしました」

 

30代に入ると、女優としての方向性など、仕事面での苦悩があったという。役柄の幅も広がった。

 

「演じるためには人間を観察して、心情を表現するため、自分とは違う役でも『生きている』感覚のようなものがあります。夫婦役、子どもがいる設定などもあるなかで、自分の役割をしっかり果たしていくことがいちばん大事でした」

 

■未婚のプレッシャーを「独自性」という強みに

 

「結婚をしたら子どもを持つ」という漠然とした考えがあるなかで、40歳を過ぎ、その選択肢も少しずつなくなっていったという。そしてひとつの壁にぶつかった。

 

「結婚して母親になるという経験をしていないことを、女としても女優としてもコンプレックスというか、すごくプレッシャーに感じていました。親の気持ちを表現するにも、子どもがいないのにどうすればいいんだろうって。でも、じゃあ殺人者の役はどうするんだという話ですよね。大事なのは自分の中で考えて作り出すことで、ある意味、クリエイティブの自由があるということ。『自分なりの独自性につながればいい』と、やっと思えるようになりました」

 

プレッシャーを強みに変えられる芯の強さを感じるが、これまでもこういう悩みや葛藤は自分一人で解決してきたのだろうか。

 

「結婚したからって私自身の悩みが解決されるわけではないですよね。恋愛もそうですが、相手が自分のことをすべてわかってくれるわけではないですし、わかってもらえないことばかり(笑)。自分も相手のことを完全に理解できませんし……まだまだ到達できなかったという感じですかね」

 

未婚を自分で選んだわけでも、自立した女性を目指したわけでもないと続けつつ、結婚観は少しずつ変わっていったという。

 

「他人と共同生活をしながら一緒に歩いていくというイメージは昔から変わっていません。ただ、若いときは結婚や籍を入れることにこだわりがありましたが、関係性さえ構築できれば十分ではないかと思うようになりました。とても仲のいいご夫婦の家に遊びに行くと、お子さんもかわいくて、ご主人も優しくて、本当にうらやましいなと思います。でも、自分にとってもそれが幸せなのかといったら、ひょっとしたら違うかもしれないとも」

 

では、いい人がいてタイミングもぴったり合っていたら?

 

「それは、結婚していますよ。結婚に反対しているわけでも、したくなかったわけでもありません。今後だって何が起こるかわかりませんし、ご縁があったら結婚という選択肢もあります」

 

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