■最初は断ろうと思った小説の執筆。“仲間”が背中を押してくれた
小説執筆のきっかけとなったのは、「日記のように、自分の成長記録や感じたことをありのまま出そう」と思って始めたX(旧Twitter)だった。
「僕のXを編集者の人が見て、小説を書かないかというお話がきました。しかし、これまで本をたくさん読んできたわけでもないから、最初は『俺は無理だよ』と断ろうとしたんです」
だが、背中を押してくれたのは、自助グループでできた仲間たちだった。
「『やってみなきゃわからないし、できないと決めつけるより最善を尽くしてみたら?』『チャンスだよ』と言ってくれて。自信はなかったけれど、自分はエンタメでしか生きられない人間ですから、自分なりに考えて引き受けようと決めました」
最初の原稿には編集者からたくさんの赤字が入った。何度も書き直した短編が文芸誌「小説宝石」(2021年1・2月合併号)に載った。郷里の同級生の女の子の思い出をもとに書いた「シクラメン」という作品だ。それからも、自分や母、祖母や旧友たちをモデルに小説を書き続けた。
■「必ず同じ苦しみをもって生き直している人がいる」
2023年1月、これらの短編を再構成してできた自伝的小説『土竜』(光文社)を出版した。
「正直言って不安でしたね。これでいいのかなっていう。あんなことを起こしてしまった自分が、まして夢をもって小説家になりたいと思ってこなかった自分が書いた作品が、はたして世の中にどう思われるんだろう。自分の欠点なんだけど、よくない妄想とか、マイナスに考えたりしちゃうんですね。それに押しつぶされそうにもなりました」
だが、いざ発売されると、反響は予想以上だった。
「読んだ人から、『良かったよ』とか、『本当に昭和の時代を思い出した』とか『小説の中の土佐弁に久しぶりにノスタルジーを感じた』とか嬉しい言葉をどんどんいただいて。思ってた不安が吹っ飛んだ。小説を書いて『あぁ、良かったな』という気持ちに変わりましたね」
それから3年。待望の第二作『今日も眠れない』が出版される。同作は各章のタイトルが子どもの遊具の名前で統一されているという。
「自助グループの仲間たちの、僕よりも『えっ、そんな人生があるのか』という物語をいろいろ聞くことができて、そこから着想を得ました。公園をイメージして、一つひとつの遊具を人々の悩みや苦しみに見立てているんです。そこに共感して集まる人たちの姿がリンクするんじゃないかと思いました」
自身の過去の反省も織り交ぜながら、今作では、人の心の奥深く、生きる上でのターニングポイントも描いたと胸を張る。
「これを読んで『一人じゃないぞ』って。『勇気をもって助けてくれって声を上げろ』と伝えたいですね。必ず同じ苦しみをもって、そこから出会い直して生き直している人たちがいるから」
【INFORMATION】
https://books.kobunsha.com/book/b10203658.html

