The Guardian
FBI(アメリカ連邦捜査局)の盗難美術品専門部局において、今も最大の懸案事項となっているのが、1990年に起こったイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の盗難事件だ。FBIはこのほど新たに防犯ビデオの映像を公開し、広く情報提供を募ることを発表した。
1990年3月18日早朝、警官の制服を着た二人の男がイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館に侵入し、レンブラントの「ガリラヤの海の嵐」「黒装束の婦人と紳士」、フェルメールの「合奏」といった希少価値の極めて高い絵画を含む13点の美術品が盗み出した。その価値は5億ドルに上るとされ、史上最大規模の盗難事件と言われている。警備員はその日の朝、ダクトテープで椅子に縛り付けられ、地下室に閉じ込められている状態で発見された。
発生直後からFBIが捜査の指揮を執ってきたが、未だに盗まれた美術品は一点も見つかっていない。盗難事件としての時効は既に迎えているため、犯人は起訴されることはないが、美術品の奪還を最大の目的として今もなお捜査が続けられている。
このたび公開された6分40秒の映像には、強盗が侵入する24時間前に短いジャケットを来た若い白人男性が、警備員によって裏口から館内に通される様子が映っている。また、盗難事件の前後に美術館付近で目撃された車が美術館に横付けされているところも収められている。FBIボストン支局のヴィンセント・リージ捜査官は「このビデオを公開することで意義のある前例を作り、最終的には盗まれた美術品を取り戻したい」とコメント。盗まれた絵画のあった場所には、創設者の遺言に従って現在も空の額が飾られている。再び在るべき場所に絵画が戻ることを願ってやまない。