米カリフォルニア州のヨセミテ国立公園にそびえるエル・キャピタン。ロッククライミングの名所として知られるこの一枚岩に8歳で登攀したという猛者が現れた。
「やったぞ! (中略)なんて素晴らしい1週間だったろう。サムを心から誇りに思う。エル・キャピタンの最年少ロープ登攀を達成したんだ」
こうFacebookに誇らしげに書き込んだのは、コロラドスプリングスに住むジョー・ベイカーさん。8歳の息子サムくんとエル・キャピタンに挑み、5日がかりでその頂きに到達したという。これまでの登頂最年少記録は、2019年に登攀を成功させた10歳のセラ・シュナイターくんだった。
「エル・キャピタン登頂の最年少記録を更新」とのニュースは世界を駆け巡り、多くの賞賛の声が寄せられた。しかし、クライミング業界の人々の受け止め方は全く違った。
Daily Mailによると、「サムは岩をクライミングしたのではなく、アセンダー(登高器)と呼ばれる登攀器具の助けを借りて、あらかじめセットされていたロープで登ったに過ぎない」「ガイドが全てやってくれている。これはクライミングではない」などと指摘するプロのクライマーが続出しているという。
当初、ベイカーさんはFacebookで「ロープ登攀」ではなく「クライミング」という言葉を使っていたようだ。これに専門家が「ロープと器具を使ったなら、実際に手で“登った”ことにはならない」と異議を唱えたのだ。
ベイカーさんはDaily Mailの取材に対し、「クライミングという言葉の使い方について考えたことはありませんでした。フリークライミング、アイスクライミング、ソロクライミング、ロープクライミングなどいろいろありますが、そのどれとも言わず、ただ“クライミング”とだけ言ったんです。言葉についてこんな論争が起こるなんて思ってもいませんでした」と困惑気味に語った。
今後はこれ以上の反発を避けるために、常にロープ登攀だと明記することにしたという。Facebookの投稿も、これが理由で後日編集したと見られている。
ベイカーさんは11月2日、Facebookに現在の心境を次のように書き込んだ。
「これはサムの1年越しの夢でした。厳しい勉強と多くの鍛練が必要でした。サムはクライミングコミュニティを崇めています。だから、一部の人が言葉の選び方だけで彼の功績を貶めることが残念でなりません。
ロープ登攀と呼ぶべきだと聞いてから、僕たちはそう呼ぶように努力しています。(中略)私たちがそこで分かち合った冒険と友情は、誰にも真似できない最高のものでした。息子のサムを心から誇りに思います」