中国の通販大手SHEINが、過酷な条件のもとで労働者を働かせていることが判明したと、英BBCが報じて波紋を呼んでいる。
2008年創業のSHEINは、トレンドを取り入れた多種多様な洋服を安価で販売することで知られ、TikTokやInstagramでのインフルエンサー・マーケティングで世界最大級のファッション小売業社の一角にまで成長した。
しかしその急成長の裏には、劣悪な労働条件のもとで働くことを強いられている工場従業員の存在があったというのだ。
2021年、スイスの人権擁護団体パブリック・アイは、SHEINに商品を供給する工場の従業員が低賃金で週75時間労働を強いられている実態を公表。さらに非常口が一つもない建物に、商品用の生地が詰め込まれた大きな袋が所狭しと並べられていたため、パブリック・アイは「火事が起きたとしても逃げられない」と報告していた。
これに対してSHEINは、従業員の待遇改善を約束し、BBCの追跡取材に対しては「指摘された問題に懸命に取り組んでおり、大きな進展があった」とも述べていた。
しかし、2023年にパブリック・アイが広州にある6つの工場で13人の従業員に再び聞き取り調査を行ったところ、多くの労働者が週75時間を超える勤務を未だに余儀なくされていることが判明。その後新たに発表した報告書で明らかとなった。
縫製を担当している従業員は「毎日、朝の8時から夜の10時半まで働いて、休みは月に1日です。もし縫製にミスがあった場合、手直しは無給でやらされます」とBBCの取材に対して語っている。
Asia Floor Wage Allianceによると、中国における生活賃金は約6512元(約14万円)だが、SHEINの工場従業員の残業代を含まない基本給は2400元(約5万1000円)ほどに留まっているという。また、工場内では小さな子どもがベビーシッターをしていたり、子どもが商品の梱包をしていたりと児童労働の実態も明らかになったそうだ。
SHEINはBBCへの声明の中で、「サプライチェーン全体のガバナンスおよびコンプライアンス強化のために数千万ドルを投資している」と述べているが、工場の労働者が置かれている環境に、その“投資”は行き渡っていないようだ。
ASIA FINANCIALは、SHEINは今月中にロンドン証券取引所(LSE)への新規株式公開を目指していると報じている。一連の報道や調査を、LSEはどう受け止めるのか注目が集まっている。